ドアーズ/まぼろしの世界

ドアーズ/まぼろしの世界：伝説的ロックバンドの真実と幻影

『ドアーズ/まぼろしの世界』(原題: When You're Strange)は、2009年に公開されたアメリカ合衆国のドキュメンタリー映画です。この作品は、1960年代後半から70年代初頭にかけて世界的な人気を博したロックバンド、ドアーズの、バンド公認による初の劇場用長編ドキュメンタリーとして注目を集めました。

映画は、ドアーズの結成から、カリスマ的フロントマンであるジム・モリソンの死（1971年）までを描いています。メンバーであるレイ・マンザレクとジム・モリソンがカリフォルニア大学ロサンゼルス校で出会った1964年頃からのバンドの歩みを、当時の貴重なオリジナル映像を用いて克明にたどります。特に、1969年にモリソンが監督・主演した幻の映画『HWY（ハイウェイ）』からのフッテージも含まれており、これまで世に出る事の無かった貴重な映像の数々が含まれている点も大きな魅力となっています。

演出面では、新たな撮影は一切行われていません。過去の映像と、ハリウッドスターであるジョニー・デップによる落ち着いたナレーションのみで構成されている点が、このドキュメンタリーの大きな特徴です。デップのナレーションは、映像と完璧に調和し、ドアーズの歴史とメンバーの人物像を巧みに浮き彫りにしています。

完成度の高さから、『ドアーズ/まぼろしの世界』は数々の国際映画祭で上映されました。2009年にはサンダンス映画祭、ベルリン国際映画祭、ドーヴィル映画祭、サンセバスチャン国際映画祭、ロンドン映画祭、ウィーン国際映画祭、リオデジャネイロ国際映画祭など、世界各地の主要な映画祭で上映され、高い評価を受けました。翌2010年にはサンタバーバラ国際映画祭でチケットが即日完売するほどの盛況ぶりを見せ、フランスでは公開された音楽ドキュメンタリー映画として最高のオープニング記録を樹立しました。

そして、この映画の成功は商業的な成功に留まりませんでした。第53回グラミー賞において、『ドアーズ/まぼろしの世界』は見事最優秀長編ミュージックビデオ賞を受賞しました。ドアーズは過去にグラミー賞の功労賞を受賞していましたが、部門別の賞を受賞するのはこれが初めてでした。授賞式にはメンバーのロビー・クリーガーが登壇し、喜びのコメントを発表しました。

『ドアーズ/まぼろしの世界』は、単なる音楽ドキュメンタリーを超えた、芸術性と歴史的価値を兼ね備えた作品と言えるでしょう。ロック音楽史に大きな足跡を残したドアーズの軌跡を、貴重な映像と落ち着いたナレーションで丁寧に描いた本作は、音楽ファンのみならず、映画ファンにとっても必見の作品です。ジム・モリソンというカリスマ性と謎めいた魅力を放つ人物像、そしてドアーズというバンドの生々しい歴史を体感できる、貴重な機会を提供してくれるでしょう。監督はトム・ディチロ、製作にはピーター・ジャンコウスキー、そしてプロデューサーとしてジョン・ボーグ、ジェフ・ジャンボル、ディック・ウルフらが携わりました。編集はミッキー・ブライスとケビン・グラスニーが担当し、記録映像はポール・フェラーラが担当しています。メンバーは、ジム・モリソン、ジョン・デンズモア、ロビー・クリーガー、レイ・マンザレクです。

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