ドイツ人民党

ドイツ人民党（DVP）: ヴァイマル共和政期の自由主義右派政党

ドイツ人民党（Deutsche Volkspartei、略称：DVP）は、第一次世界大戦後のヴァイマル共和政期において、ドイツで重要な役割を果たした政党です。国民自由党や進歩人民党といった帝政時代の自由主義政党の流れを汲みつつ、実業界からの強い支持を得て、政治の中枢で活躍しました。本稿では、その成立から衰退、消滅に至るまでの歴史と、ドイツ政治への影響について詳述します。

結党と党の基本的立場

1918年、第一次世界大戦終結直後の混乱期において、自由主義勢力内部に亀裂が生じました。新党「ドイツ民主党」の結成が模索される中、グスタフ・シュトレーゼマンという政治家の存在が大きな問題となりました。シュトレーゼマンは、戦時中に強硬な対外政策を主張し、軍部との繋がりも強かったため、多くの自由主義者から批判を受けていました。

この対立を背景に、シュトレーゼマンは国民自由党を改組し、1918年12月15日にドイツ人民党を結成しました。これにより、自由主義勢力は右派の人民党と左派の民主党に分裂することとなりました。人民党は、多くの議員が大企業や銀行の役員を務めていたことから、「実業界の親玉の政党」と呼ばれることもありました。しかし、単なる企業の代弁者ではなく、一定の自立性を保ちながら政治活動を行っていました。当時最大の利益団体であったドイツ工業全国連盟(RDI)などからも支援を受け、ヴァイマル共和政に対して明確に反対する立場をとるわけではありませんでしたが、帝政時代の影響も色濃く残していました。

与党への道

1919年の国民議会選挙では19議席しか獲得できず、野党に甘んじました。しかし、1920年の総選挙では65議席に躍進。その後、社民党、中央党、民主党との連立政権（ヴァイマル連合）に参加し、政権を担うようになりました。しかし、巨額の賠償金問題などをめぐって連立政権は不安定さを増し、何度も内閣が崩壊と再編を繰り返します。この中で、シュトレーゼマンは外交において大きな役割を果たし、西方諸国との関係改善に努めました。1926年にはノーベル平和賞を受賞するなど、国際的な評価も高まりました。

シュトレーゼマンの首相・外相期と党の変質

1923年のルール占領に際しては、シュトレーゼマンが首相となり、ハイパーインフレーション対策やルール問題の解決に当たりました。その後も外務大臣として、ヴェルサイユ条約の遵守を旨とする「履行政策」を推進しました。しかし、1920年代後半から世界恐慌の影響を受け、経済界の代表としての立場が強まるにつれ、党内は保守化、資本家寄りの姿勢を強めていきました。シュトレーゼマンは、大連立による政治安定を模索しましたが、党内の保守派の抵抗に苦しみました。シュトレーゼマンの死後、党はますます右傾化し、大連立政権維持の努力も失われていきます。

衰退と消滅

1930年代に入ると、ドイツ人民党は急速に支持を失い、議席数を減らし続けました。ナチス党の台頭と、大恐慌による社会不安の高まりによって、人民党は政治的影響力を失っていきました。1933年、ナチス政権下で自主解散を余儀なくされ、歴史の幕を閉じました。しかし、その活動はヴァイマル共和政期の政治史において、重要な位置を占めており、後世に多くの示唆を与え続けています。戦後には、旧人民党のメンバーの一部が自由民主党の結成に関わりました。

主要人物

・グスタフ・シュトレーゼマン：人民党の創設者にして指導者。首相、外務大臣を歴任。

参考文献

本文中に挙げられている参考文献以外にも、数多くの研究書が存在します。ヴァイマル共和政、ドイツ史、シュトレーゼマンに関する研究書を参照することで、より深く理解を深めることができます。

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