ドイツ民主党

ドイツ民主党(DDP)：ヴァイマル共和政下のリベラル左派政党の興亡

ドイツ民主党(Deutsche Demokratische Partei, DDP)は、第一次世界大戦後のドイツにおいて台頭したリベラル左派政党です。1918年、進歩人民党(FVP)と国民自由党(NLP)の一部勢力が合併して結成されました。穏健な左派、中道、リベラルな勢力を集め、社会民主党(SPD)や中央党とともにヴァイマル共和政の政治において重要な役割を果たしました。

党の結成と初期

DDPは、共和政の樹立と民主主義の確立を強く訴える知識人や専門家によって創設されました。初代党首フリードリヒ・ナウマンは、「進歩」、「成長志向の私経済」、「社会正義」、「寛容」、「同胞意識」、「個人主義」といった理念を掲げました。

経済的には、大資本家の支持を受けつつも、議会主義の枠組みの中で、社会民主党や労働組合とも協力関係を築き、中小資本家、都市中間層、知識人、労働者の一部からも支持を集めました。特に、フーゴ・プロイスやマックス・ヴェーバー兄弟といった著名な学者たちが党に参画していたことは特筆に値します。

党は、大ドイツ主義（ドイツとオーストリアの合併）を熱心に推進しました。これは、1848年革命の完成を大ドイツ主義の達成と捉える自由主義左派の思想に基づいていました。ナウマンをはじめとする中央ヨーロッパ主義者がその中心人物でした。

ヴァイマル共和政最初の国民議会選挙で第3党となり、シャイデマン首相率いる連立政権に加わりました。一時、ヴェルサイユ条約への反対から連立を離脱しましたが、すぐに復帰しました。SPD、中央党とDDPによる連立政権は「ヴァイマル連合」と呼ばれ、共和政維持の支柱となりました。

党勢の低迷と分裂

しかし、DDPはその後、急速に勢力を失っていきます。1920年の国会選挙では得票数が激減し、議席数も大きく減らしました。これは、ヴェルサイユ条約への期待と現実の乖離、党首ナウマンの死去、他の有力政治家の引退といった要因が重なったためです。

さらに、党内にはユダヤ人が多く所属していたため、「ユダヤ人の党」と攻撃されるなど、反ユダヤ主義の標的となりました。このことが党勢低迷の一因となりました。

また、DDP内部は常に派閥抗争に悩まされました。議員団を最高意思決定機関とする中で、右派と左派が対立し、党内は分裂状態が続きました。右派は工業資本や銀行資本と近しい関係にあり、左派は労働組合やユダヤ人団体との繋がりを持つなど、それぞれの利害が対立していました。

ドイツ国家党への改名と解党

1920年代後半、エーリヒ・コッホ＝ヴェーザーの指導の下、DDPは中道政党の一本化や青年ドイツ騎士団との合併などを模索しました。1930年、青年ドイツ騎士団と合併し、ドイツ国家党(Deutsche Staatspartei, DStP)と改名しました。しかし、この合併は党勢回復には至らず、むしろ党内混乱を招きました。

1933年、ナチスが政権を掌握すると、DDPは禁止され、解党に追い込まれました。第二次世界大戦後、そのメンバーの一部は自由民主党(FDP)の結成に参加しました。

著名な党員

DDPには、フーゴ・プロイス（憲法学者、内相）、ヴァルター・ラーテナウ（外相）、マックス・ヴェーバー（社会学者）、アルフレート・ヴェーバー（社会学者）、テオドール・ホイス（西ドイツ初代大統領）など、多くの著名な人物が所属していました。彼らの活動は、ヴァイマル共和政、ひいてはドイツの歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

エーリッヒ・アイク 著、救仁郷繁 訳『ワイマル共和国史』全4巻、ぺりかん社
フライ, ブルース・B 著、関口宏道 訳『ヴァイマール共和国における自由民主主義者の群像―ドイツ民主党・ドイツ国家党の歴史』太陽出版
* その他多数

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