ドイツ書籍賞

ドイツ書籍賞：ドイツ文学を代表する賞とその光と影

ドイツ書籍賞(Deutscher Buchpreis)は、2005年に創設された、ドイツを代表する文学賞の一つです。フランスのゴンクール賞やイギリスのブッカー賞になぞらえられるほどの権威を誇り、ドイツ語で書かれた長編小説を対象としています。

選考過程は非常に厳格で、各出版社が自社から最大2作品を応募、そこから約20作品が8月に最初の候補（ロングリスト）として発表されます。さらに、10月にはこの中から6作品程度が最終候補（ショートリスト）として絞り込まれます。そして、フランクフルト・ブックフェア開催直前の月曜日に、受賞作品が発表されます。受賞者には2万5000ユーロの賞金が贈られ、ショートリストに残った作品にもそれぞれ2500ユーロが授与されます。

審査員は、作家2名、ジャーナリスト4名、書籍商1名で構成され、ドイツ書籍賞アカデミーが毎年選出します。この選考過程は、多くのメディアで数ヶ月間にわたって詳細に報道され、大きな注目を集めます。候補作品20作あまりの売上も大きく増加することが知られています。

しかし、この賞の選考基準や運営方法については、批判も存在します。例えば、賞の授賞式に参加しない著者は辞退とみなされるなど、文学以外の要素が選考に影響しているとの指摘があります。中には、「ベストセラーが欲しい書籍チェーン店のための賞」といった批判的な声も上がっており、文学賞としての純粋性をめぐる議論が絶えません。

受賞者と作品は、ドイツ文学史に大きな足跡を残しています。過去の受賞作品と受賞者は以下のとおりです。

2005年: アルノ・ガイガー 『Es geht uns gut』
2006年: カタリーナ・ハッカー 『Die Habenichtse』
2007年: ユーリア・フランク 『Die Mittagsfrau』
2008年: ウーヴェ・テルカンプ 『Der Turm』
2009年: カトリーン・シュミット 『Du stirbst nicht』
2010年: メリンダ・ナジ・アボーニ 『Tauben fliegen』
2011年: ユージェン・ルーゲ 『In Zeiten des abnehmenden Lichts』
2012年: ウルズラ・クレヘル 『Landgericht』
2013年: テレジア・モラ 『Das Ungeheuer』
2014年: ルッツ・ザイラー 『Kruso』
2015年: フランク・ヴィッツェル 『Die Erfindung der Roten Armee Fraktion durch einen manisch-depressiven Teenager im Sommer 1969』
2016年: ボー・キルヒホフ 『Widerfahrnis』
2017年: ロバート・メナッセ 『Die Hauptstadt (The Capital)』
2018年: インガー＝マリア・マールケ 『Archipel』
2019年: サーシャ・スタニシッチ 『Herkunft』
2020年: アンネ・ウェーバー 『Annette, ein Heldinnenepos』
2021年: アントイェ・ラーヴィク・シュトゥルーベル 『Blaue Frau』
2022年: キム・ド・ロルィゾン 『Blutbuch』
* 2023年: トニオ・シャヒンガー 『Echtzeitalter』

このように、ドイツ書籍賞は、ドイツ文学界において重要な位置を占める賞である一方、その選考基準や運営方法については、常に議論の的となっています。受賞作品は、ドイツ文学を代表する作品として、世界中にその名を知らしめる機会にもなっています。今後の動向にも注目が集まります。

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