ドゥブロヴニク

アドリア海の真珠、ドゥブロヴニク：歴史と文化の街

ドゥブロヴニクは、クロアチア南部のアドリア海沿岸に位置する、歴史と文化が息づく美しい都市です。古くはローマ時代、あるいはそれ以前にまで遡る歴史を持ち、イタリア語名「ラグーサ」はそのラテン語名「ラグシウム」に由来します。7世紀頃には、スラヴ人の侵略から逃れたダルマチア人の避難民が、ラウス島に集落を形成したとされています。近年の発掘調査では、ビザンチンのバジリカや城壁の一部などの発見から、従来の説とは異なる見解も提示されています。また、ギリシャ様式の遺物が多数発見されたことから、ギリシャ人船員によって成立されたとする説も有力視されています。

ラグーサ共和国時代の繁栄

東ゴート王国崩壊後、ドゥブロヴニクはビザンティン帝国の保護下で都市国家として発展しました。十字軍の後、ヴェネツィア共和国支配下に置かれましたが、1358年のザダル平和条約でハンガリー王国から独立、14世紀から1808年まで「ラグーサ共和国」として繁栄を極めました。

ラグーサ共和国は、アマルフィ、ピサ、ジェノヴァ、ヴェネツィアと並ぶ5つの海洋共和国の一つとして、巧みな外交と豊かな富によってアドリア海を制覇しました。特に15世紀から16世紀にかけては最盛期を迎え、ヴェネツィア共和国を唯一のライバルとして、東西交易の中心的役割を果たしました。

イタリア系とスラヴ系の住民が共存し、独自の法体系や医療制度、社会福祉制度を整備。1317年には現在も営業する薬局が開業するなど、近代的な都市として発展しました。奴隷貿易廃止や水道施設の建設など、先進的な政策も特徴的です。

しかし、1667年の大地震とアドリア海の交易不振により徐々に衰退。1806年にはナポレオン軍の侵攻を受け、ラグーサ共和国は滅亡しました。

激動の20世紀と世界遺産登録

1814年、オーストリア＝ハンガリー帝国領となり、20世紀初頭には観光開発が始まりました。第一次世界大戦後にはユーゴスラビア王国、第二次世界大戦時にはクロアチア独立国の一部となり、その後ユーゴスラビア社会主義連邦共和国に編入されました。

1991年のユーゴスラビア崩壊に伴うクロアチア独立戦争では、セルビア・モンテネグロ軍による7か月間の包囲（ドゥブロヴニク包囲）を受け、旧市街は甚大な被害を受けました。しかし、その後、ユネスコのガイドラインに基づいて忠実に復旧が進められ、1979年に世界遺産に登録された旧市街は、その美しい景観を取り戻しました。

ドゥブロヴニクの魅力

ドゥブロヴニク旧市街は、ピレ門、プラツァ通り、ドミニコ修道院、フランシスコ会修道院、スポンザ宮殿、ルザ広場、司教宮殿、聖イヴァン砦、聖ヴラホ教会、大聖堂、そして城壁など、歴史的建造物が数多く残されています。城壁は全長約1900メートル、高さ20メートルにも及ぶ堅牢なもので、旧市街を一望できる絶好のスポットです。

アルボレトゥム・トルステノという世界最古の植物園や、1317年から現在まで営業するヨーロッパ最古級の薬局なども存在し、歴史と自然の両方を満喫できる魅力的な都市です。毎年夏にはドゥブロヴニクサマーフェスティバルが開催され、活気に満ち溢れています。

近年、ペリェシャツ橋が開通したことで、クロアチア本土とのアクセスが飛躍的に向上し、観光客にとってより便利になりました。ドゥブロヴニク空港も国際線に対応しており、世界中から観光客が訪れています。

ドゥブロヴニクは、歴史、文化、自然が融合した、アドリア海の真珠として、世界中の人々を魅了し続けています。

もう一度検索