ドキュメント女ののど自慢

『ドキュメント女ののど自慢』は、1979年9月から『ルックルックこんにちは』の最終回まで、毎週水曜日に放送された日本テレビ系列の視聴者参加型企画です。番組を象徴する長寿コーナーとして、多くの視聴者に親しまれました。

内容

このコーナーでは、毎回5～10名の女性出場者が登場し、それぞれの人生における様々な出来事、特に苦労や困難を乗り越えたエピソードなどを紹介しました。当初はスタジオで日テレのアナウンサーやレポーターがナレーションを担当していましたが、後にVTR形式に変更されました。人生のドラマが語られた後、出場者は持ち歌を熱唱します。審査員による採点に基づき、合格者には豪華な賞品が贈られました。

この企画の大きな特徴は、単に歌の上手さだけでなく、出場者が語るドキュメントの内容も審査に影響を与えた点にあります。特に、プロの審査員（レギュラー審査員）の点数が低くても、一般の主婦で構成された審査員（主婦審査員）が、出場者の人生ドラマに感動し、共感によって高い点（温情点と呼ばれることも）を与えることで合格に繋がるケースも少なくありませんでした。これは、従来の素人歌番組には見られない独自の要素でした。

通常の放送に加え、夏休みなど長期休暇の時期には女子高校生大会が企画されたこともあり、ここから後にプロとして活躍する歌手も輩出されています。また、タイトルに反して男子高校生大会など、男性限定の特別企画が放送された実績もあります。スタジオには、主婦審査員だけでなく、出場者の家族や友人なども応援に駆けつけ、横断幕を掲げて熱心に声援を送る様子が恒例となっていました。

審査方法

審査は、4名（コーナー開始当初から1986年頃までは3名）の専門審査員と30名の主婦審査員によって行われました。専門審査員はそれぞれ100点、主婦審査員はそれぞれ1点の持ち点で、合計430点満点でした。各賞には合格点が設けられており、獲得点数がそれを超えれば合格となりました。専門審査員の点数だけで合否が決まることもありましたが、主婦審査員の点数が大きく影響する場合がほとんどでした。

得点は、まず専門審査員の合計点が発表され、その後、主婦審査員の点数が加算される形で発表されました。末期には専門審査員の構成が変わり、レギュラー審査員2名にゲストタレント1名とゲストの演歌歌手やアーティストが加わることが多くなりました。この時期はゲスト審査員の採点が比較的甘く、不合格者があまり出ない傾向が見られました。

過去には、松居一代や細川たかしがゲスト審査員や代理審査員として参加した際に、100点満点を与えた記録があります。また、レギュラー審査員では船村徹、千葉紘子、若原一郎らが99点を出したことがあります。一般的に、専門審査員の点数は80点台後半が平均的でしたが、90点台を獲得するとプロ歌手としての可能性が高いと見なされ、実際にここからプロデビューした人も存在しました。70点台以下の低得点が出ることは非常に稀でした。

賞と賞品

番組にはいくつかの賞が用意されていました。スペシャル賞（後に新設）、A賞、B賞、C賞があり、末期にはD賞が廃止されました。それぞれの賞には合格点が設定されていました。

- スペシャル賞: 審査員3人制時300点、4人制時395点
- A賞: 審査員3人制時285点、4人制時375点
- B賞: 審査員3人制時270点、4人制時360点
- C賞: 審査員3人制時265点、4人制時350点
- D賞 (廃止): 審査員3人制時230点、4人制時340点

専門審査員の合計点だけで合格点に達した場合、その時点で合格を知らせる音が鳴りました。反対に、専門審査員の合計点と合格点との差が大きく開き、主婦審査員の点数を加えても合格が極めて困難な状況になると、その時点で不合格の音楽が流れることもありました。主婦審査員の得点は通常10点から20点程度でしたが、これが合否を分ける重要な要素となりました。特にスペシャル賞は合格点が高く困難でしたが、プロ並みの歌唱力を持つ出場者は主婦審査員点が少なくても合格する例がありました。

A賞からD賞にはそれぞれ複数の賞品が用意されており、出場者は自分のドキュメント紹介前に希望する賞を選択しました。A賞の航空券をはじめ、指輪、高級和牛、温泉宿泊券、自転車などが賞品として提供されました。最高位のスペシャル賞を獲得すると、天井から大量の紙吹雪が降り注ぎ、A賞からD賞までの全賞品が一括して贈られました（後に数十万～百万円相当の豪華カラオケ機器も副賞として加わりました）。その他、参加者全員に贈られる参加賞や、なべおさみ氏が司会を務めていた時期には、不合格者の中から1名に贈られる「なべ賞」として鍋が進呈される特別賞もありました。

セットと演出

番組のセットは、基本的に『ルックルックこんにちは』の他の曜日と同じスタジオセットを使いつつも、放送に使用されるスタジオは異なっていました。得点発表ボードは時代の変化と共に仕様が変更されました。初期は電光掲示板で、審査員ごとと主婦審査員合計点が表示されていましたが、1994年頃にデジタル表示に変更され、さらに1996年以降は各審査員席に個別の点数表示が置かれ、ボードには合計点と主婦審査員点のみが表示されるようになりました。ボードの背景色や数字の表示形状も何度か変更されています。得点発表時の効果音には、アナログ式ストップウォッチを早回ししたような音や、電子計算機のリレー音に似た独特の刻むような音が使われていました。

歴代司会者

このコーナーの司会は、長年にわたり二人の人物が務めました。

- なべおさみ (1979年9月 - 1991年5月): 温かみのある、人情味あふれる進行で、番組の顔として視聴者に愛されました。しかし、息子の大学替え玉受験問題を受けて降板を余儀なくされました。
- 夏木ゆたか (1991年6月 - 2001年3月): なべ氏の降板に伴い、それまで審査員を務めていた夏木氏が司会を引き継ぎました。得意の早口と、場面に合わせたしっとりした口調を使い分け、独自のスタイルを確立しました。

著名な出場者

『ドキュメント女ののど自慢』には、後に有名になった多くの人々が出場しています。

- 島谷ひとみ: 1997年の女子高生大会に出場し、スペシャル賞を獲得。後にオーディション番組を経てプロデビューしました。
- 川久保由香: 1993年頃の女子高生大会でA賞を獲得。審査員点、主婦審査員点ともに非常に高く、当時の最高得点を記録しました。後に演歌歌手としてデビューしています。
- 山形くるみ: 1996年の女子高生大会でスペシャル賞を獲得。同年にはNHKのど自慢のグランドチャンピオンにも輝き、その後演歌歌手となりました。
- 森山愛子: 2000年の女子高生大会に出場。その後の活躍につながるきっかけの一つとなりました。

また、企画として芸能人が出場する回もありました。ナインティナインの岡村隆史氏や矢部浩之氏、テツandトモなどが登場し、それぞれ歌唱を披露しています。ナイナイの岡村氏はスペシャル賞に挑戦しましたが、主婦審査員点が伸びずに惜しくも不合格となりました（A賞なら合格ラインに達していました）。テツandトモはA賞を獲得しています。

『ドキュメント女ののど自慢』は、単なる歌合戦ではなく、出場者の人生ドラマを通じて視聴者に感動と共感を与え、長きにわたり愛された名物コーナーでした。そこから巣立った人々や、記憶に残る名場面は、今なお多くの人々の心に残っています。

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