ドクターの名前

「ドクターの名前」(原題:The Name of the Doctor)は、2013年5月18日にBBC Oneで放送された、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第7シリーズの最終話です。スティーブン・モファットの脚本、サウル・メッツスタインの監督により制作され、745万人の視聴者を獲得、批評家からも高い評価を得ました。

物語は、グレート・インテリジェンスと呼ばれる謎の存在が、ヴィクトリア朝探偵の仲間たちを拉致するところから始まります。彼らはドクターの未来の墓所がある惑星トレンザロアへ、11代目ドクターを呼び寄せます。グレート・インテリジェンスの目的は、ドクターのタイムラインに介入し、歴史を書き換えることでした。

放送に先立ち、いくつかのミニエピソードが公開されました。「She Said, He Said」では、ドクターとクララの関係性が描かれ、「Clarence and the Whisper Men」では、クララに関わる重要な伏線が示唆されています。「Strax Field Reports」は、ストラックスによる報告で、ドクターの秘密や、物語に繋がる重要な情報が語られています。これらのミニエピソードは視聴者の期待感を高め、本編への導入として効果的に機能しています。

本編では、過去のドクターたちが登場し、シリーズ全体の連続性を強調しています。初代から10代目までのドクターの映像や、ドクターの孫娘スーザン・フォアマンの再登場など、長年のファンを魅了する演出が随所に散りばめられています。また、グレート・インテリジェンスはドクターの過去に触れ、過去の敵や出来事を想起させます。

物語のクライマックスでは、クララの謎が解明され、シリーズを通して積み重ねられてきた伏線が回収されます。そして、ジョン・ハート演じるウォードクターが初登場し、後の50周年記念スペシャルへの布石となります。ウォードクターは、ドクターの再生における重要な役割を担う存在として描かれ、ドクターの歴史における空白を埋める重要な要素となっています。

製作において、脚本家のスティーブン・モファットは、過去のモンスターを登場させるのではなく、新たな脅威としてウィスパーメンを創造しました。そのデザインは、過去と未来を繋ぐエピソードにふさわしい、スタイリッシュで不気味な雰囲気を醸し出しています。

放送直前には、ブルーレイの製作ミスにより、プロットが一部のファンに漏洩するという事件が発生しました。しかし、BBCは迅速に対応し、ファンたちにプロットを公開しないよう要請し、漏洩を防ぐことに成功しました。モファット自身も、プロットを守ったファンたちを称賛しました。

放送後、「ドクターの名前」は高い視聴率を獲得し、批評家からも高い評価を得ました。ガーディアン紙やIGN、デイリー・テレグラフなど、多くのメディアが、本作を高く評価し、シリーズ最高のエピソードの一つであると評しました。一方で、グレート・インテリジェンスやウィスパーメンについては、脅威としてやや弱いという指摘もありました。

「ドクターの名前」は、その後DVDとブルーレイとして発売され、日本の市場にもリリースされました。また、ヒューゴー賞にもノミネートされるなど、世界的な評価を得ています。このエピソードは、『ドクター・フー』シリーズの中でも特に重要なエピソードであり、シリーズ全体における歴史や、登場人物たちの深み、そして物語のスケールを感じさせる、傑作の一つと言えるでしょう。

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