ドクター・モリスの島/フィッシュマン

ドクター・モリスの島/フィッシュマン：カリブ海の悪夢

1979年、イタリアで生まれたSFホラー映画『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』（原題：L'isola degli uomini pesce / Island of the Fishmen）は、H・G・ウェルズの小説を原作とする名作『ドクター・モローの島』から着想を得た作品です。カリブ海の嵐で難破した囚人護送船から奇跡的に生還した軍医クロードは、無人のはずの孤島に漂着します。しかし、そこは平和な楽園ではなく、恐怖に満ちた悪夢の島でした。

奇妙な島の住人たちと、狂気の科学者

島で生き残った囚人たちと共に食料を求めて彷徨うクロード。彼らを待ち受けていたのは、正体不明の生物による襲撃でした。次々と仲間を失っていく中、クロードはアマンダという美しい女性と出会います。アマンダは、この島から一刻も早く逃げるようクロードに警告します。

二人は島で奇妙な農場を発見し、そこで暮らすエドモンドという男と出会います。エドモンドはアマンダを妻として紹介し、クロードを夕食に招待しますが、クロードは二人の様子に不自然さを感じます。やがて、この島が異常な場所であることに気づき始めたクロードは、半魚人と呼ばれる奇怪な生物に襲われますが、アマンダに救われます。

衝撃の真実と、壮絶な逃亡劇

その後、クロードは傷ついた老人マーヴィンと出会います。マーヴィンはアマンダの父親であり、この島とエドモンドの恐るべき秘密をクロードに明かします。エドモンドの正体は、学界を追われた狂気の科学者、ドクター・モリスでした。彼は、島近海で発見されたアトランティスの遺跡から財宝を手に入れるため、島の住民を半魚人に改造するという恐ろしい実験を行っていたのです。マーヴィンは、モリスにアマンダを人質に取られ、実験に加担させられていたのです。

モリスはマーヴィンを殺害し、アマンダを拉致して遺跡に向かいます。クロードは彼らを追跡し、モリスとの死闘を繰り広げます。そして、モリスを倒したクロードは、アマンダと共に半魚人たちによって救出され、火山噴火で崩壊する島からの脱出を果たすのです。

多様な公開形態と、異なった展開

『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』は、イタリアでの公開後、アメリカでも公開されましたが、その際には独自に再編集された複数のバージョンが存在します。“Something Waits in the Dark”や“Screamers”といったタイトルで公開されたアメリカ版は、ジョー・ダンテやミラー・ドレイクなど、B級映画界の巨匠たちの関与によって、新たなシーンが追加され、残酷な描写も増えています。予告編には、本編にはないシーンも含まれており、公開時のプロモーション戦略も非常に興味深いものです。日本でも、1980年代からVHS、DVD、Blu-rayと様々な媒体で公開されており、日本語吹替版も存在します。

撮影地と製作背景

映画の撮影は、カリブ海の島々で行われ、植民地時代の雰囲気をリアルに再現しています。サルデーニャ島の美しい自然や洞窟なども撮影場所として使用され、水中のアトランティスの遺跡はローマのオリンピックプールでミニチュア撮影されました。1995年には、続編となるテレビ映画も制作されています。

多くのバージョンと、異なる魅力

『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』は、単なるモンスター映画ではなく、狂気の科学者と、彼によって操られる人々の悲劇、そしてそれを乗り越えようとする人間の強さを描いた作品です。様々なバージョンが存在することで、それぞれの魅力を楽しむことができるのもこの映画の大きな特徴と言えるでしょう。イタリア版、アメリカ版、そして日本の公開版それぞれの違いを比較しながら鑑賞するのも、また違った楽しみ方ができるでしょう。

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