ドジャースの戦法

『ドジャースの戦法』の概要

『ドジャースの戦法』（原題: The Dodgers' Way to Play Baseball）は、1954年にアル・キャンパニスによって書かれた野球の技術書です。本書はメジャーリーグベースボール（MLB）のブルックリン・ドジャースがスプリングトレーニングで使用した訓練メソッドをまとめたもので、貧打のチームが守備を強化することで勝利を目指す新しいスタイルを提案しています。また、内村祐之による日本語訳がなされ、日本の野球界にも深く根付いています。特に、川上哲治監督がその戦法を導入したことにより、日本でも広く知られるようになりました。

原著と日本語訳

本書は、フロリダ州ベロビーチで毎年約600人のプロ選手を指導する際に集約された知見を基にしています。ドジャースは当時、貧弱な攻撃力ながらも守備で勝利を目指すチームとして知られており、その戦法は「スモールベースボール」の理論に則っています。攻撃面では、犠打やヒットエンドランを駆使し、守備面ではバント対策として外野手が果敢にカバーに走るなど、緻密なチームプレーが強調されています。

本書は、1955年から1957年にかけて『月刊ベースボールマガジン』で連載され、日本でも注目されました。日本語訳の際には、内村祐之の娘である多摩清が下訳を手がけ、内村美代子が読みやすい日本語に改訂を行いました。この「内村家の翻訳工場」が作り出した形で、内容は日本の野球界で広まりました。

本書の構成

本書は以下の3部門に分かれています。

1. 守備編

投手

投手の技術について、球の握り方や投球フォーム、塁状況ごとの投球姿勢など、多方面にわたる工夫が述べられています。また、コントロールを改善するための具体的な方法が提供され、選手が実戦で役立てやすい内容です。

捕手・内野手・外野手

捕手や内野手、外野手それぞれの役割や具体的なプレーの指導が詳細に解説されており、プレーの予測や守備体勢、協力プレーの重要性についても触れています。特に、チーム全体としての連携の重要性が強調されています。

2. 攻撃編

バッティング

打撃の基本からフォロースルー、ストライクゾーンの理解に至るまで。各種テクニックや攻撃的なスタイルの確立が解説されています。

バントと走塁

状況別のバント技術や効果的な走塁の方法が示されており、選手たちが実践で活用できる戦術が詳述されています。

3. 指揮編

コーチや監督の役割

選手の動きを観察し、適切な戦略や戦術を立案するための指導法が解説されています。また、試合運びや選手起用のタイミング、サインの取り決めとその意義も大切なテーマとして扱われています。

野球界への影響

『ドジャースの戦法』は野球の指導現場で「バイブル」とされ、現在まで多くのコーチや監督によって参照されています。特に、川上哲治はこの書を社内で読ませ、巨人軍の戦力を飛躍的に向上させました。ドジャース出身の指導者たちが続々とMLBの指導現場に現れる背景には、本書の影響があったと言えます。

本書の知識は、日本だけでなく世界中の野球シーンでも影響を与え続けており、強いチームを育成するための重要な教本として長きにわたって愛用されています。

もう一度検索