ドドンパ

ドドンパの概要と歴史

ドドンパとは、1960年代に日本で広まった特殊なリズムスタイルであり、「国産ラテン・リズム」としても知られています。この音楽は、具体的には4拍子の2拍目に極端に強いアクセントがあり、ジャズと同じように1拍目の前半が長く、後半が短いシャッフルリズムで構成されています。

歴史的背景

オフビート・チャチャチャというスタイルは、キューバ音楽の一つであるチャチャチャがフィリピンで変化し、その後アジア各国に広がったものです。特にフィリピンの演奏者やダンサーによる巡業が、香港、台湾、シンガポール、タイ、カンボジア、日本などで、この新しい音楽を普及させました。この潮流には、各国に駐留していた米軍基地の影響も少なからずありました。米軍基地が発信地となって、周辺地域のナイトクラブやダンスホール文化がさらに広まったのです。

日本でのドドンパは、大阪にある高級ナイトクラブ「アロー」で生まれました。このクラブは1958年に開業し、当初はフィリピン人ダンサーによるオフビート・チャチャチャを取り入れていました。1950年代中盤からのマンボブームに影響を受け、日本では1拍目から足を踏み出すマンボのスタイルが流行していました。そのため、ダンスのスタイルが次第に変わっていったのです。

アローで活動していたダンサー、特にダニーとエルニーは、2拍目から始めるチャチャチャのステップを披露しましたが、日本人にはこのスタイルを真似ることが難しかったため、アローのマネージャーは2拍目を強調して演奏するようバンドに指示しました。当時のアローのバンドはラテン音楽に特化していなかったため、ジャズオーケストラによる演奏が行われ、ダンス音楽としてのリズムを軽視していたことも影響しています。その結果、ダンスの利便性とバンドの演奏スタイルによってドドンパが生まれました。

ドドンパの普及

自然に形成されたドドンパは、アローで活躍していたアイ・ジョージによるメディア出演を通じて広まりました。彼は壽屋（現在のサントリー）のテレビコマーシャルで歌って踊り、その影響力は大きかったと言われています。また、アローの常連客であった永六輔や鴨居羊子がドドンパのLPのデザインやライナーノーツに関わり、多くのレコードが大阪のテイチクから販売されました。その中には、「東京ドドンパ娘」がヒットした1961年の音源や同名映画の制作も含まれています。

しかし、ドドンパの流行には徐々に陰りが見えてきました。類似のスタイルであるパチャンガやスク・スクなどの新しいダンスリズムが、次々と外国で流行していると宣伝されるようになったからです。日本においては、アメリカの主流音楽産業がメディアを通じて流入する中、ドドンパは徐々にその影を薄くしていきました。また、アイ・ジョージはコンサート活動に集中するようになり、ドドンパをテーマにした日本劇場でのステージショーも成功を収められませんでした。

その後もドドンパは時折注目され、1976年には桜たまこが「東京娘」をリリースし、1992年にはモダンチョキチョキズが「ティーンエイジ・ドドンパ」を発表、2004年には氷川きよしが「きよしのドドンパ」をヒットさせましたが、当時のような大ブームには至っていない状況です。

結論

ドドンパは1960年代の日本における特異な音楽現象であり、オフビート・チャチャチャからの派生として、文化と音楽の交差点で生まれた独自のリズムとして今日でも語り継がれています。

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