日本劇場

日本劇場の歴史と特徴

日本劇場（にほんげきじょう）は、東京都千代田区有楽町にあった名劇場で、通称「日劇（にちげき）」として広く知られていました。1933年に完成し、戦争の影響を受けながらも半世紀以上にわたり、日本の興行界を支える重要な施設として機能しました。日劇は、日本初の高級映画館としての位置づけもあり、当初は「陸の龍宮」や「シネマパレス」といった構想があり、4,000人を収容できる大規模な劇場として設計されました。

建築と開館

日劇の設計は名建築家の渡辺仁によるもので、アールデコ調の内装や独特な屈曲した外壁は当時の斬新さを象徴していました。開館披露式は1933年12月24日に行われ、多くの人々が訪れました。開館後は日本映画劇場株式会社が経営していましたが、経営不振のため一時閉館しました。その後、日活が賃借して映画館を運営しましたが、この経営も短命に終わります。その後、東宝が賃借し、直営化し、更に吸収合併を経て日本劇場は東宝の主要な劇場の一つとして生まれ変わります。

戦後の興行

戦後、日本劇場は東宝映画と実演の二本立てで興行を行い、特に日劇ダンシングチームのレヴューや人気歌手のショーは大変な人気を博しました。昭和30年代には「ウエスタン・カーニバル」などの催しが盛況となり、1953年や1960年には『NHK紅白歌合戦』も開催されるなど、一時代を築いていました。1970年代にはNETテレビの音楽祭の会場にもなり、文化的な集まりの場としても認知されていました。

老朽化と閉館

しかし、戦前の建築であったため老朽化が進み、音響設備や舞台装置の劣化も目立つようになりました。1981年2月15日をもって閉館し、隣接する朝日新聞東京本社とともに解体され、その跡地には有楽町センタービル（有楽町マリオン）が建設されました。日劇としての名前や歴史はその後、TOHOシネマズ日劇に受け継がれましたが、こちらも2018年に営業を終了しています。

日劇ダンシングチームとその活動

日劇ダンシングチームは、春・夏・秋の三大おどりを行い、特に観客からの支持を集めていました。しかし、1970年代に入ると、テレビの普及や娯楽の多様化により、次第にファン層が減少し、観客動員数が著しく低下しました。このため、実演の形態も変化し、ミュージカルのような作品を取り入れ、なんとか人気を取り戻そうとする努力がなされましたが、残念ながらこの試みも長続きせず、1977年にはレヴュー公演を終了せざるを得ませんでした。

歌謡ショーとその魅力

1960年代まで、日劇の舞台に立つことは一流芸能人の証とされ、多くの歌手が憧れを抱いていました。基本的には日替わりの公演が行われ、必ず日劇ダンシングチームのダンサーが出演していました。ただし、作品の質が必ずしも高いわけではなく、特にダンスに関しては同じ振り付けが使い回され、糾弾されることもありました。1980年以降は、歌謡ショーの公演は打ち切られ、映画上映専門の劇場に特化することになります。

所在と構造

日本劇場は、地上7階、地下3階からなる構造で、内部は豪華な装飾が施されていました。特に大理石やレリーフ、ステンドグラスによる壮大な空間は開館当初、多くの人々を驚かせました。しかし年月とともに、その美しさは失われ、閉館間際にはテナントの雑居ビル化が進んでいました。

日本劇場の歴史は、その華麗さと共に、興行界の変遷を映し出す一つの物語でもあります。

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