ドナウ＝イラーSバーン

概要

ウルムおよびノイウルムを中心とする都市圏とその周辺地域において、広域的な公共交通システムとして計画・整備が進められているのが、このドナウ＝イラーSバーン（Regio-S-Bahn Donau-Iller）である。主に近郊および中距離輸送を担い、ウルム中央駅をその運行ネットワークの中核拠点としている。プロジェクト全体の完了は、2030年を目標に設定されている。

計画と沿革

Sバーン網整備に向けた構想の提示

Sバーン網の構築に向けた最初の具体的な構想は、ドナウ＝イラー地域協会（RVDI）によって2012年11月に発表された。この構想では、鉄道施設の改修にかかる費用として約7,400万ユーロが見積もられている。

関係自治体との連携強化

プロジェクトを推進するため、バーデン＝ヴュルテンベルク州とウルム市は2017年12月27日に連携協定を締結した。ウルム市、アルプ＝ドナウ郡、ビベラッハ郡、ハイデンハイム郡は、隣接するバイエルン州の地域と連携し、統一された運行基準や円滑な乗り換え体制を備えたSバーンシステムの導入を目指している。利用者にとって快適な移動と他の交通手段への乗り換えやすさを考慮し、プラットフォームの高さはバリアフリーに対応した55 cmに統一される方向である。

バイエルン州においても、運輸大臣は2018年9月28日にノイウルムにて地域Sバーンドナウ＝イラー協議会と連携協定を結んだ。バイエルン州側の視点からは、ウルムとメミンゲン間でSバーン路線を開設し、既存路線の相当部分を改修することが、一日あたり平均約7,500人の利用客に対応するために求められていた。

資金確保への取り組み

約7億ユーロに及ぶ総事業費の確保に向けて、バーデンヴュルテンベルク州とバイエルン州は、2021年2月に地方公共団体交通財政支援法に基づく資金援助の対象候補（カテゴリーC）として整備計画案を連邦政府に提出した。実際に資金を得るためには、このカテゴリーを「A」へ昇格させる必要がある。将来的な輸送サービスに関する具体的な内容は、バーデン＝ヴュルテンベルク州、地域協会、関係自治体の間で議論が進められ、2021年3月に意思合意書としてまとめられている。

推進組織の設立

プロジェクトの推進を目的として、2015年12月22日には「ドナウ＝イラー地域Sバーン協議会」が設立された。この協議会には、RVDIに所属する自治体や都市圏、ハイデンハイム郡が参加しており、プロジェクトの初期段階における鉄道施設工事、特に30箇所に及ぶ停車場の整備などについて、計画、調整、実行を担うことを目標としている。2020年末には、新たに東アルプ郡も協議会への参加を表明している。

路線網の展開と現況

Sバーン路線網としての運行は、2020年12月より段階的に開始された。当初、ウルム - メミンゲン間およびウルム - ヴァイセンホルン間で運行されていた普通列車が、それぞれRS7系統およびRS71系統として案内されるようになった。その後、2021年12月12日のダイヤ改正では、ウルム - ビベラッハ間（RS2系統）、ウルム - ムンデルキンゲン間（RS3系統）、ウルム - アーレン間（RS5系統）が新たにSバーンとして運行区間に加わった。

2021年12月以降、以下の路線系統が運行されている。

- RS71系統（ゼンデン - ヴァイセンホルン）：2013年12月に普通列車の運行が再開された路線。同年夏に改良工事が行われ、貨物列車も再び通行可能となった。新たに4箇所の停車場が設置または移設され、列車は毎時運行されている。
- RS2/RS21系統（ウルム - フリードリヒスハーフェン方面）：ウルム - フリードリヒスハーフェン間の電化完了に伴い、ウルム - アウレンドルフ区間で運行。RS21はラウフハイム市街駅を経由してビベラッハ南駅まで走る一方、RS2はラウプハイム線を経由しない。
- RS3系統（ウルム - シグマリンゲン方面）：ウルム - ムンデルキンゲン間を毎時運行している。
- フィルス谷方面：2022年12月にヴェンドリンゲン - ウルム高速線で長距離列車が運行開始された後、Sバーン系統の列車はガイスリンゲンまで運行される見込みである。
- RS5/RS51系統（アーレン - ウルム）：RS5はウルムとアーレンの間を毎時運行し、一部の駅には停車しない。RS51はウルムとランゲナウの間を毎時運行しており、朝の通勤時間帯にはアーレンまで直通運転される便もある。
- RS7系統（ケンプテン - ノイウルム方面）：ウルム - メミンゲン間を毎時運行している。将来的に、ゲルレンホーフェン - ゼンデン間およびケルミュンツ駅 - プレース旧駅間では複線化の改良が計画されている。

使用車両

電化されている区間では、DB425形電車が主に運用されている。一方、電化されていない区間ではLINT54気動車が中心的に使用されており、特にRS7系統およびRS71系統では623形気動車も運行に就いている。

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