ドナトゥス派

ドナトゥス派についての詳述

ドナトゥス派（イタリア語: Donatismo）は、4世紀から5世紀にかけて北アフリカで広がったキリスト教の一つの分派であり、その教義は主流の教会から異端とされることが多いです。英語では「Donatists」とも呼ばれ、時には「ドナティスト」という表現も見られます。この運動は、「ドナトゥス主義」または「ドナティズム」としても知られ、これに関する議論は「ドナティスト論争」と称されることがあります。

主な主張

ドナトゥス派の特徴的な主張は、一度棄教したキリスト教徒が実施するサクラメント（秘蹟や礼典など）は無効であるという考え方です。彼らは、教会は常に聖なる存在でなければならないとし、教会の教師や聖職者が過去に棄教した場合、その職務やその人が行うサクラメントは神の恩寵を受けられないと信じていました。そこで、ドナトゥス派に改宗する者は再び洗礼を受ける必要があるとされました。

発端と歴史的背景

この運動の発端は、311年の事件にさかのぼります。カルタゴの助祭であったカエキリアヌスが司教に任命された際、彼を叙品した司教の一人が過去に棄教歴を持っていたため、地元の司教たちがその任職を否認しました。これにより、マヨリヌスという別の司教が任命されたが、その死後には、ドナトゥスが新たにカルタゴの司教に選ばれました。このドナトゥスがドナトゥス派という名称の由来となっています。

313年、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世は教会の統一を図るための会議を開催し、カエキリアヌスの地位の正当性を認めましたが、ドナトゥス派はこれに従わず、結果的に弾圧を受けました。411年にはカルタゴで大規模な会議が行われ、アウグスティヌスがドナトゥス派に対する反駁の中心となりました。彼の論争を通じて教会論が形成され、人の罪はサクラメントの有効性には影響を与えないことが確認されました。

ドナトゥス派に対する反論

ドナトゥス派との論争の核心は、一度離教した者によるサクラメントが有効かどうかというものでした。アウグスティヌスの立場からは、すべての人間は罪に染まっているため、神の恩寵はその道徳的状態に左右されません。彼は、サクラメントの有効性は信徒や授洗者の聖性に必ずしも依存しないことを示しました。

このカルタゴ会議の後、皇帝ホノリウスはドナトゥス派を異端として宣告し、414年にはその信者の市民権を剥奪しました。ドナトゥス派は、ローマ帝国の崩壊やその後の様々な支配者のもとでも存続していましたが、イスラームの侵入によって7世紀頃には消滅しました。

教派からの評価

正教会ではドナトゥス派を「西方に発生した分離派」と位置づけており、アウグスティヌスの論証に賛同する過程で彼の教会の価値を擁護しているとされています。カトリック教会でも、アウグスティヌスはドナトゥス派に対抗する論理を展開し、教会の聖性を強調しました。ドナトゥス派の著作や信者が全て否定されるわけではなく、一部が評価されることもあります。

プロテスタント教会の多くは、アウグスティヌスの考えを受け入れつつも教会論を軽視しました。宗教改革者たちは、ドナトゥス派論争が神の恵みに関する重要な議論であったことに注目し、その影響を考慮しています。

この複雑な歴史と教義について考えると、ドナトゥス派の論争は今日のキリスト教における信仰の本質や教会の役割についての重要な教訓を提供するものとして見ることができます。

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