ドボシュトルタ

ドボシュトルタ

ドボシュトルタは、ハンガリーを代表する焼き菓子のひとつで、精巧な層と独特の風味で世界中で愛されています。ハンガリー語では「dobostorta」、ドイツ語では「Dobostorte」と表記され、日本ではドボシュトルテ、ドボシトルタなどとカナ表記されることもあります。

概要

ドボシュトルタは、6層の薄いスポンジケーキの間に、チョコレート風味の濃厚なバタークリームを挟んだケーキです。最大の特徴は、ケーキの最上部を覆うパリパリとした食感のカラメルでコーティングされている点です。このカラメルが、ケーキ全体の風味と食感に独特のアクセントを加えています。

考案者は、19世紀後半に活躍したハンガリーの菓子職人ヨーゼフ・ドボシュです。彼は、日持ちが良く、かつ美味しいケーキを追求し、このドボシュトルタを開発しました。ドボシュトルタは、当時のオーストリア皇后エリーザベトにも愛され、試食したという逸話も残っています。

ヨーゼフ・ドボシュは晩年、投資の失敗と病気により亡くなり、彼のお店は現存しません。しかし、彼のレシピを受け継いだ菓子職人たちが、その味を守り続けています。特に、ドボシュと同時代に活躍したエミル・ジェルボーの店「カフェ・ジェルボー」では、オリジナルに近いドボシュトルタを提供しており、多くの人々がその味を求めて訪れます。

歴史

ヨーゼフ・ドボシュは、1887年にドボシュトルタを考案し、そのユニークな包装方法で国内外への発送を可能にしました。1896年の万国博覧会では、ドボシュパビリオンが建設され、作りたてのドボシュトルタが来場者に提供されました。その人気は非常に高く、粗悪な模倣品が出回るほどでした。そのため、ドボシュは1906年にドボシュトルタのレシピを公開し、ブダペストの菓子職人ギルドに寄贈しました。

1962年には、ハンガリーの料理人と菓子職人の組合が、ドボシュトルタの生誕75周年を記念する式典を開催しました。この式典では、菓子職人たちが直径約1.8メートルの巨大なドボシュトルタと共にブダペストの街をパレードし、その偉業を称えました。

特徴

スポンジ生地: 薄く焼き上げたスポンジケーキは、均一な厚さに保たれ、バタークリームとの調和が考えられています。
バタークリーム: 濃厚なチョコレート風味のバタークリームは、口どけが良く、スポンジケーキとの相性が抜群です。
カラメル: 最上部を覆うパリパリとしたカラメルは、見た目の美しさだけでなく、香ばしい風味と独特の食感をケーキに加えています。

類似のケーキ

ドボシュトルタと並び、ハンガリーを代表するケーキとして、エスターハージートルテが挙げられます。エスターハージートルテは、メレンゲをベースとした生地と、バニラ風味のバタークリームを組み合わせたケーキで、ドボシュトルタとは異なる魅力を持っています。

参考資料

『チョコレートブック』（ヘルガ・ルビンスタイン著、平凡社）

関連項目

エスターハージートルテ
ハンガリー料理
* オーストリア料理

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