ドミニク・ブシェ

ドミニク・ブシェ：フランス料理界の巨匠、日本との深い絆

ドミニク・ブシェ（Dominique Bouchet）は、1952年フランス、シャラント＝マリティーム県出身のフランス料理シェフです。彼は長年にわたりフランス料理界を牽引し、その卓越した技術と創造性で多くの人々を魅了してきました。

フランスでの輝かしいキャリア

ブシェは1969年に料理人のCAP（職業適性証）を取得後、ラ・ロシェルのホテル専門学校で学びました。その後、パリのフランス料理店でキャリアをスタートさせ、19歳の時に、当時セーヌ川の船上シェフであったジョエル・ロブションの下で3ヶ月間働いた経験が、その後の彼の料理人生に大きな影響を与えました。

兵役後、1974年にロブションがシェフを務める「コンコルド・ラファイエットホテル」（当時ミシュラン一つ星）に戻り、右腕として活躍します。1978年には、「ジャマン」（当時ミシュラン二つ星）のシェフに就任し、3年間その星を維持しました。

1981年、当時ミシュラン三つ星であった「トゥール・ダルジャン」のオーナー、クロード・テライユから厨房の指揮を依頼され、29歳という若さで三つ星シェフとなります。この頃から日本との関係を積極的に築き始め、東京のトゥール・ダルジャン開業にも携わりました。彼は7年に渡り、三つ星を維持し続けました。

20年間パリでキャリアを積んだ後、ブシェは故郷であるシャラント地方モスナックにホテル・レストラン「ムーラン・ド・マルクーズ」を開業。オーナーシェフ兼ビジネスディレクターとして、2年目に二つ星を獲得します。その後、パリの中心、コンコルド広場に位置するパラス「ホテル・ド・クリヨン」の総料理長に就任し、メインダイニング「レ・ザンバサドゥール」（当時ミシュラン二つ星）をはじめ、ホテル内の食に関する全てを統括しました。1999年には、フランスの料理専門雑誌『Le Chef』によって、フランス中のシェフ、パティシエ、ソムリエの投票で《今年のシェフ》に選出されています。

30年間ガストロノミー界を牽引した後、ブシェは2004年にホテル・ド・クリヨンを離れて独立。パリ8区に自身の名を冠したレストラン「レストラン ドミニク・ブシェ」をオープンしました（ミシュラン一つ星）。その後、日仏交流の場としてレストラン隣に「Wa-Bi Salon」を、反対隣にはセルフサービスのカンティーヌ「Little B」もオープンしました。

国境を越えた活躍、そして日本との深い繋がり

ブシェは美食に関する仕事で、アメリカ合衆国、イギリス、ベルギー、オランダ、シンガポール、スイス、モロッコ、タイ、トルコ、日本、ウルグアイ、レバノン、イタリア、中国など、世界各国を訪れています。中でも日本との関わりは非常に深く、日本を第二の故郷と呼び、2000年代からは3週間ごとにパリと東京を往復する多忙な生活を送っていました。

2001年には、日本航空ファーストクラスの機内食の監修を担当。2004年には、日本に自身の会社「Atelier DY」を設立し、アドバイザーとして名古屋の結婚式場「Marriyell」など、日本の複数の企業と協業しています。フランスでは2009年にDBコンセイユ・インターナショナルを設立しました。

2013年には、東京の銀座5丁目にレストラン「ドミニク・ブシェ」をオープン。開業からわずか4ヶ月でミシュラン二つ星を獲得するという快挙を達成します。2015年には銀座一丁目に移転し、店名を「ドミニク・ブシェ トーキョー」と改めました。こちらも移転後4ヶ月でミシュラン二つ星を獲得。同年、フランス語翻訳家の松本百合子と結婚しました。その後も、2016年に銀座5丁目にビストロ「レ・コパン」、2017年に金沢に「ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ」、2018年に名古屋に「レ・トレフル ドミニク・ブシェ」、2019年にはウェスティン都ホテル京都に「ドミニク・ブシェ キョート」の2店舗（「ル・レストラン」「ル・テッパンヤキ」）をオープンするなど、日本での活動を積極的に展開しています。

コラボレーションと日本文化への貢献

ブシェは、金沢の酒蔵、福光屋とのコラボレーションで、フランス料理に合う日本酒「ゆり」「ふく」「さち」を開発しました。2006年から2014年まで、日本酒をアペリティフとしてワイングラスで飲むことを提案するなど、日本酒の新しい楽しみ方を提唱。また、日本発フランス生まれの新しい素材、ブラン・ビジューのイメージ・アドバイザーも務めました。

受勲歴

2002年：レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ
2007年：芸術文化勲章
* 2016年：パリ市ヴェルメイユ・メダル

ドミニク・ブシェは、フランス料理界における卓越した才能と、日本文化への深い理解と貢献によって、両国を結ぶ架け橋として、これからも輝き続けるでしょう。

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