ドミニク・ヴァンダム

ドミニク＝ジョゼフ・ルネ・ヴァンダム

ドミニク＝ジョゼフ・ルネ・ヴァンダム（1770年11月5日 - 1830年7月15日）は、ナポレオン戦争時代に活躍したフランスの将軍であり、その軍事的能力と特異な人柄で知られています。彼は、戦場での残忍さや獰猛さから悪名高く、ナポレオンからも特異な扱いを受けました。ナポレオンは彼に対して「もし君が二人いたならば、私はもう一人を君に殺させるだろう」と語ったとされ、彼の個性と戦術への評価を示しています。

軍歴の始まり

ヴァンダムは1793年にフランス革命戦争が勃発した際、既に少将とされていましたが、この頃、彼は略奪の疑いにより軍法会議にかけられ、一時的に停職処分を受けます。しかし、1799年には復帰し、第一次シュトッカッハの戦いで功績を上げました。戦争が進む中で、彼の指導力や戦術的洞察が求められる場面が次々と訪れましたが、その一方で、彼の性格からくる問題もたびたび浮上しました。

主な戦闘と戦績

1805年のアウステルリッツの戦いでは、プラツェン高地を奪還する攻撃を指揮し、大きな成功を収めました。「三帝の戦い」と呼ばれるこの戦役は、ナポレオンの名声を高める重要な出来事となり、ヴァンダムもその一端を担いました。

続く1809年の戦役では、彼はアベンスベルク、ランツフート、エックミュール、そしてヴァグラムの各戦いに参加しましたが、戦闘中に負傷も経験します。このように、激しい戦闘での活躍が続くも、彼の将軍としての立場は常に危ういものでした。

1813年には、ドレスデンの戦いで敗北した連合軍の追撃に加わりますが、クルムの戦いではプロイセン軍に包囲され、彼とその指揮下の兵士たち1万3千名が捕虜となってしまいます。この捕虜の際、彼はロシア皇帝アレクサンドル1世の前で略奪行為を非難されましたが、彼は「私は略奪者でも山賊でもありません」と反論し、その言葉は歴史に残るものとなりました。

百日天下と晩年

1815年の百日天下の際、ヴァンダムはグルーシー指揮下の第3師団を率いていました。ワーテルローの戦いにおいては、彼がグルーシーにナポレオンと合流するように進言しましたが、グルーシーはプロイセン軍の追撃を優先し、結果として戦鬥は敗北に終わります。こうした結果が彼の名誉に影を落とすこととなりました。

敗戦後、ヴァンダムは第二次王政復古の混乱の中でアメリカに追放され、長い間国外での生活を余儀なくされます。しかし1819年には帰国を果たし、その後の彼の人生は軍人としての栄光と混乱からの復帰を反映したものとなりました。彼の生涯は、ナポレオン戦争の激動の時代とそれに伴う人間ドラマの一端を物語っています。

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