ドラゴントライアングル

日本の魔の海域：ドラゴンズ・トライアングルとデビルズ・シーの謎

太平洋、日本の近海には、バミューダトライアングルになぞらえられた「ドラゴンズ・トライアングル（竜の三角）」や「デビルズ・シー（悪魔の海）」と呼ばれる海域が存在すると主張されています。これらの海域では、船舶や航空機が突如として姿を消す不可解な事件が数多く発生したとされ、古くから多くの謎と恐怖の物語を生んできました。しかし、これらの物語の真相は、必ずしもオカルト的な現象によるものではなく、歴史的背景や誇張、誤解などが複雑に絡み合っていることがわかっています。

デビルズ・シー：漁師たちの恐怖とメディアの誇張

「デビルズ・シー」の呼称は、1950年代初頭、日本の南海上での船舶失踪事件が契機となって生まれたとされています。複数の船舶が相次いで消息不明となり、漁師たちの間では「魔の海」として恐れられるようになりました。この噂は、1955年のニューヨーク・タイムズの記事によって世界中に広まりました。記事では、5年間で9隻の船が失踪したとされ、「デビルズ・シー」の名称も登場します。しかし、この報道には誇張や誤解が含まれており、実際に失踪した船舶の数や原因は記事とは異なっていました。

ローレンス・D・クシュによる調査では、ニューヨーク・タイムズの記事の基となった情報は、正確性に欠けるものであったことが判明しています。例えば、記事で取り上げられた「第十伸洋丸」の失踪は、無線故障による一時的な連絡途絶だけであり、無事に生還していました。また、「危険区域」という記述も、明神礁周辺への接近制限に関する通達を誤解したものでした。

読売新聞や朝日新聞なども、この事件を報道する際に「魔の海」といった表現を用いており、これが「デビルズ・シー」という呼称の広まりに一役買っています。当時のメディア報道は、事実に基づかない誇張や、ゴジラなどの怪獣映画ブームと合わせたオカルト的な解釈を含むものだったことがわかります。

ドラゴンズ・トライアングル：新たな伝説と超古代文明の仮説

チャールズ・バーリッツは、1989年の著書『The Dragon's Triangle』（邦題：魔海のミステリー）において、「ドラゴンズ・トライアングル」という新たな海域を設定しました。彼は、この海域で発生したとされる39件の失踪事件をリストアップし、超古代文明の関与や、海の悪魔といったオカルト的な要素を絡めた説を展開しました。しかし、このリストに含まれる事件の多くは、実際には天候不順や機械故障といった自然現象や人為的ミスが原因であることが分かっています。

バーリッツは、複数の事件の情報を寄せ集め、都合の良いように解釈し、あたかも不可解な現象が集中しているかのような印象を与えています。彼の著書は、事実の歪曲や誇張、そして根拠のない推測に基づいたものであり、科学的な裏付けに欠けるものです。

フォルモサ・トライアングル：ジンからの伝承

「フォルモサ・トライアングル」は、台湾、ギルバート諸島、ウェーク島を結ぶ三角形海域で、エジプト人ジャーナリストのMuhammad ‘Isā Dāwūdの書籍に登場する比較的新しい概念です。この本では、180歳のジン（魔人）から聞いたという伝承に基づき、バミューダトライアングルと同様、この海域も魔物たちが好む場所であるとされています。この物語は、フィクションの要素が強く、科学的な根拠に乏しいです。

まとめ：伝説と現実の狭間

「ドラゴンズ・トライアングル」や「デビルズ・シー」は、数々の失踪事件を背景に生まれた伝説的な海域です。しかし、これらの海域における異常現象は、科学的な裏付けに乏しく、多くの場合、自然現象や人為的ミス、メディアの誇張などが原因であることがわかっています。これらの物語は、海に対する人間の畏敬の念や、未知なるものへの好奇心、そしてエンターテインメント的な要素が複雑に絡み合った結果、生まれたものであると言えるでしょう。 これらの伝説は、現代においても、海という未解明な領域への畏怖と探求心を象徴する存在として、私たちの想像力を刺激し続けています。

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