ドラゴン/ブルース・リー物語

ドラゴン／ブルース・リー物語：伝説の武道家の人生と悲劇

1993年、アメリカで製作された映画『ドラゴン／ブルース・リー物語』（原題：Dragon: The Bruce Lee Story）は、20世紀を代表する武道家、ブルース・リーの生涯を描いた感動的な伝記映画です。ブルース・リーの妻であるリンダ・リー・キャドウェルの著書「ブルース・リー・ストーリー」と、『燃えよドラゴン』の監督を務めたロバート・クローズの著書“Bruce Lee: The Beginning”を原作としており、彼の輝かしい成功と、あまりにも早すぎる悲劇的な最期を丁寧に描き出しています。

映画は、ブルース・リーの幼少期から始まり、彼がハリウッドでスターダムを駆け上がっていく過程、そして私生活における葛藤や苦悩を克明に描写します。単なる成功物語ではなく、才能と努力、そして孤独やプレッシャーとの闘いを描いた、人間ブルース・リーの深層に迫る作品となっています。特に、ブルース・リーが自分自身と息子ブランドンを脅かす悪魔の幻影を見るという演出は、彼の不安や予感、そして運命的な悲劇を効果的に表現しています。皮肉にも、この映画の公開前にブランドン・リーが事故死したという事実が、この演出にさらに重みを与えています。

ブルース・リー役を演じたジェイソン・スコット・リーは、役作りのためにブルース・リー本人が実践していた截拳道のトレーニングを積んだと伝えられています。そのストイックな姿勢は、役への深い理解と、ブルース・リーへの敬意を示すものと言えるでしょう。彼の演技は、ブルース・リーのカリスマ性と内面の繊細さを巧みに表現し、高い評価を得ています。

また、映画の音楽も大きな魅力の一つです。ランディ・エデルマンが作曲したテーマ曲は、力強くもどこか切ないメロディーが印象的で、多くの映画予告編やテレビ番組のBGMとして使用されるなど、広く親しまれています。例えば、『フォレスト・ガンプ／一期一会』といった名作映画の予告編でも使用されており、この曲を知る人は少なくないでしょう。

『ドラゴン／ブルース・リー物語』は、単なるアクション映画ではなく、一人の人間としてのブルース・リー像を深く掘り下げた、感動的な人間ドラマです。彼の功績だけでなく、その影の部分、葛藤、そして悲劇的な死を丁寧に描くことで、伝説の武道家の人となり、そして人生の意味について考えさせられる作品となっています。 監督はロブ・コーエン、製作はラファエラ・デ・ラウレンティス、脚本はエドワード・クマラ、ジョン・ラッフォ、ロブ・コーエンが担当しています。その他、製作総指揮、撮影、音楽など、多くのスタッフが関わって、この傑作を作り上げています。日本では、1995年7月2日にテレビ朝日系列の『日曜洋画劇場』で初回放送されました。

この映画は、ブルース・リーのファンのみならず、映画ファン全体にとって、見逃せない作品と言えるでしょう。彼の生き様、そして時代を超えて語り継がれる彼の伝説を、この映画を通して改めて体感できるはずです。

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