ドリタン・アバゾビッチ

ドリタン・アバゾビッチとは

ドリタン・アバゾビッチ（Dritan Abazović）は、1985年12月25日に生まれたモンテネグロの政治家です。教育者としての経験も持ち合わせる彼は、2022年4月28日から2023年10月31日までモンテネグロの首相を務めました。これは、彼がモンテネグロ史上初のアルバニア系かつイスラム教徒の首相として歴史に名を刻むことになった重要な期間です。現在は、「平和は私たちの国」連合の党首を務めています。それ以前には、2020年から2022年にかけて、ズドラフコ・クリヴォカピッチ内閣で副首相を務めていました。

学歴と初期のキャリア

アバゾビッチは、サラエボ大学政治学部で学び、その在学中に大学の栄誉である「黄金憲章」を授与されました。2008年には、モンテネグロ大学政治学部で国際関係学の修士号を取得しています。学業を終えた後、彼は高校で数年間教鞭を執り、文化、コミュニケーション、宗教の歴史に関する社会学などを教えていました。また、学術的な探求を続け、2009年にはオスロ大学で平和研究のコースを修了しています。2010年には、自身の最初の著書となる『コスモポリタン カルチャーとグローバル ジャスティス』を刊行しました。

政治活動の始まり

彼の政治キャリアは、2012年に政党「肯定的なモンテネグロ」（2019年に解散）の共同設立者の一人としてスタートしました。同年のモンテネグロ議会選挙において、「肯定的なモンテネグロ」は全81議席中7議席を獲得しました。この選挙で、アバゾビッチは同国議会において当時最年少の議員として選出されました。

副首相としての役割

2020年6月には、彼が党首を務める「平和は私たちの国」連合が欧州緑の党への加盟を認められました。これは、モンテネグロの野党としては初めて欧州の政党連合に加わる事例となりました。同年12月4日、ズドラフコ・クリヴォカピッチ内閣の発足に伴い、アバゾビッチは副首相兼安全保障大臣に就任しました。この役職において、彼は国家安全保障の調整と強化に尽力し、長年にわたりモンテネグロ政治で優位を保ってきた民主社会党（DPS）の一党優位体制に終止符を打つ上で重要な役割を果たしました。翌2021年には、安全保障研究所の諮問委員会のメンバーにも任命されています。

首相への道と就任

クリヴォカピッチ内閣は、親ロシア派と親欧州連合派の間で連立内の路線対立が深まり、不安定な状況にありました。2021年9月には、この対立を背景に内閣不信任決議が提出される事態となります。内閣の崩壊が近づく中、2022年3月3日にはミロ・ジュカノヴィッチ大統領からアバゾビッチに新政権の樹立が打診されました。そして、2022年4月にクリヴォカピッチ政権が正式に崩壊した後、ジュカノヴィッチ大統領により、アバゾビッチが新たな首相に指名されました。

首相在任中の取り組み

首相として、アバゾビッチは国内外の様々な課題に直面しました。特に、2022年のロシアによるウクライナ侵攻によって生じた世界的な状況を踏まえ、彼は汚職との戦い、より持続可能な投資と開発の推進、環境保護、そして子供や若者へのより良いケアの必要性を主要な課題として強調しました。彼はこれらの問題に取り組むべく政権運営を進めましたが、その内閣は短命に終わり、2023年10月31日をもって首相の座を退きました。

現在、彼は「平和は私たちの国」連合の党首として、モンテネグロの政治において活動を続けています。教育者、学者、そして政治家として多様な経歴を持つアバゾビッチは、モンテネグロの現代政治における重要な人物の一人として位置づけられています。

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