ドリーム・ホーム

ドリーム・ホーム：高級マンションへの執念が招く悲劇

2010年、香港で製作されたパン・ホーチョン監督、ジョシー・ホー主演による映画『ドリーム・ホーム』（原題：維多利亜壹號、英題：Dream Home）は、貧しい少女時代を過ごした主人公チェンが、高級マンション「ビクトリアNo.1」への異常なまでの執着を募らせていく様を描いたサスペンススリラーです。

チェンは幼少期の貧困な生活から、いつの日か「ビクトリアNo.1」に住むことを夢見ていました。しかし、運命の皮肉は容赦なく彼女を襲います。父親がアスベストによる肺疾患を患い、高額な手術費用が必要になったのです。長年貯めてきた「ビクトリアNo.1」購入資金に手をつけることを拒否したチェンは、ある衝撃的な決断を下します。

彼女は、保険金を得るため、愛する父親を殺害したのです。この行為は、彼女の切実な願望と、社会経済的な格差という厳しい現実が織りなす、悲劇的な結末への序章に過ぎませんでした。

映画は、チェンの狂気に満ちた行動と、その背景にある社会構造を巧みに描き出しています。高級マンションという象徴的な空間は、チェンの欲望と絶望、そして社会における不平等を鮮やかに表現する舞台となっています。

ジョシー・ホーは、チェンの複雑な心境を繊細かつ力強く演じきり、スペイン・シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭2010では最優秀女優賞を受賞しました。さらに、映画の特殊メイクも高く評価され、最優秀メイクアップ/FX賞も受賞しています。

イーソン・チャン、デレク・ツァン、ローレンス・チョウら実力派俳優陣の共演も、作品に深みを与えています。彼らの存在は、チェンの物語をより複雑で、そして心に響くものへと昇華させています。

日本では2011年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、大阪アジアン映画祭での上映を経て、全国ロードショー公開されました。パン・ホーチョン監督作品としては初の全国公開という快挙を成し遂げ、話題を呼びました。

その後、2013年には「パン・ホーチョン、やっぱりお前は誰だ！？」という特集上映の一環として、東京で再上映され、改めて高い評価を得ました。

『ドリーム・ホーム』は、単なるサスペンス映画にとどまらず、現代社会における貧富の格差、人間の欲望、そして倫理観といった普遍的なテーマを深く問いかける作品です。衝撃的な展開と、チェンの内面を丁寧に描いた演出によって、観る者の心に強い印象を残す、忘れられない映画体験を提供してくれるでしょう。

監督：パン・ホーチョン
主演：ジョシー・ホー
出演：イーソン・チャン、デレク・ツァン、ローレンス・チョウ、ジュノ・マック、ミシェル・イェ

日本版DVDは、2011年4月20日にオールイン エンタテインメントより発売されました。二次市場向け作品はR15指定です。

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