ドレスデン工科大学

ドイツ東部、ザクセン州の州都ドレスデンに位置する公立大学が、ドレスデン工科大学（Technische Universität Dresden、略称：TU Dresden、TUD）です。ドイツ政府によるエクセレンス・イニシアティブの指定を受け、国内有数の工科大学連合であるTU9のメンバーにも名を連ねています。

およそ35,000名以上の学生と8,000名を超える教職員が学術活動を展開しており、ザクセン州では最大の、そしてドイツ全体でもトップ10に入る規模を誇る高等教育機関です。提供する教育課程は126にも及び、その名称に「工科大学」を冠しているものの、実際には人文科学、社会科学、教育学、言語学、経済学、法学、医学など、幅広い分野を網羅する総合大学としての側面も持っています。

その歴史は200年以上前に遡り、カールスルーエ工科大学と並んでドイツにおける最も古い工業教育機関の一つに数えられています。大学の源流は、1828年5月1日に設立されたドレスデン王立工業教育施設にさかのぼります。これが1851年には技術学校、さらに1871年にはザクセン王立高等工業学校へと発展しました。1929年にはターラント林科大学と合併し、ドレスデン工科大学（Technische Hochschule Dresden）という名称になります。現在のTechnische Universitätとしての地位を得たのは1961年のことです。その後、1986年にはドレスデン技師大学を吸収合併するなど、規模と内容を拡充してきました。

教育・研究組織は、5つの領域（Bereich）と17の学部（Fakultät）から構成されています。

• - 数学・自然科学領域：生物学部、化学・食品化学部、数学部、物理学部、心理学部
• - 精神科学・社会科学領域：教育学部、哲学部、言語学・文芸学・文化学部
• - 工学領域：電気工学・情報工学部、情報学部、機械工学部
• - 建築・環境領域：建築学部、土木工学部、環境学部、フリードリヒ・リスト交通学部、経済学部
• - 医学領域：カール・グスタフ・カールス医学部

メインキャンパスはドレスデン中央駅からわずか2駅と、市街地に近接しており、公共交通機関を利用したアクセスに優れています。ドレスデンはドイツ東部の主要な観光都市でもあり、エルベ川沿いに広がる壮麗なバロック建築群の美しさから「エルベのフィレンツェ」とも称され、街の中心部とエルベ川は世界遺産にも登録されています。キャンパス内には、世界初のカーボンコンクリート製建築として知られる建物「CUBE」があり、革新的な技術の応用を示すランドマークとなっています。

国際交流も活発に行っており、特に日本においては、明治学院大学、成城大学、京都外国語大学といった大学と大学間協定を結んでいます。また、千葉大学（園芸学）、信州大学（医学部）、佐賀大学（工学系）とは部局間の協定に基づき、学生・研究者の交流を深めています。

これまでに多くの著名な人材を輩出しており、ドイツの政治家であるカーチャ・キッピング氏やフィンランドの政治家・外交官であるカール・エンケル氏、日本の華族・政治家であった鍋島直縄氏などが卒業生として名を連ねています。科学分野では、天文学者のカール・テオドール・アルブレヒト氏、斜張橋開発のパイオニアである構造技術者フランツ・ディッシンガー氏らが活躍しています。

ドレスデン工科大学は、長い歴史と伝統を持ちながらも、最先端の技術革新を追求し、多様な学問分野を融合させるドイツ有数の研究教育機関です。

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