ドレスデンSバーン

ドレスデンSバーン

ドイツのザクセン州の州都であるドレスデンを中心に運行されている都市近郊鉄道網が、ドレスデンSバーン（ドイツ語: S-Bahn Dresden）です。この鉄道システムは、ドレスデン市とその周辺地域を結ぶ重要な公共交通機関として機能しています。

その歴史は1974年9月29日に始まります。この日、ドレスデン近郊を走る通勤列車群に対し、新たな運賃システムが導入されました。この時点ではまだ正式に「Sバーン」とは呼ばれておらず、1992年5月31日までは「都市・近郊列車路線（Stadt- und Vorortverkehr）」、略してSV-Verkehrという名称が使われていました。この日を境に、「Sバーン」という通称が正式な路線名称として採用されることになります。

その後の発展において、特に重要な転換点となったのが、1998年5月24日の上エルベ運輸連合（Verkehrsverbund Oberelbe, VVO）の発足です。これにより、ドレスデンSバーンの運賃体系はVVOの統合運賃システムの一部となり、利用者は他の公共交通機関との連携がよりスムーズになりました。

車両面でも近代化が進められました。2007年7月以降、カナダのボンバルディア社（当時）から製造された新しい2階建て客車が順次導入されました。これには13両の制御客車と40両の中間客車が含まれており、輸送力の増強と快適性の向上が図られました。

路線網も時代と共に拡充されています。2007年12月9日には、それまでRB30として運行されていた区間がSバーン網に組み込まれ、S30系統として改称されました。これにより、Sバーンは南西方向のフライベルクまでその範囲を広げました。当時のS30系統は、フライベルク、ムルデンヒュテン、ニーダーボブリッツシュ、クリンゲンベルク・コルムニッツ、エドレ・クローネ、ターラントといった駅を経由し、ドレスデンに至るルートでした。その後、2010年12月には、このドレスデンとフライベルクを結ぶ区間はS3系統として再編され、現在に至ります。

さらに、比較的近年である2021年12月12日には、既存のRB34系統が新たにS8系統として編入されました。これにより、Sバーン網はドレスデンから北東方向のカーメンツまで延伸され、より広範囲の地域をカバーするようになりました。

運行に使用される車両は、主に電気機関車が客車を牽引・推進するプッシュプル方式を採用しています。2021年時点の情報では、旅客を乗せる客車として2階建て車両が広く使用されています。これらの客車を牽引または推進する電気機関車としては、ドイツ鉄道で広く使われている143形や、新型の146.0形（ボンバルディア社製TRAXXシリーズ）などが運用されています。また、路線網の中には電化されていない区間も存在し、そうした区間ではディーゼルエンジンで走行する642形気動車が使用されています。

ドレスデンSバーンは、これらの車両と整備された路線網により、地域の住民や観光客の移動を支える基幹的な交通手段としての役割を果たしています。その歴史は、名称の変更や周辺交通連合との統合、車両の近代化、そして路線網の拡張という形で、常に進化を続けています。

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