ドン・ラーセン

ドナルド・ジェームズ・ラーセン：ワールドシリーズの英雄

ドナルド・ジェームズ・ラーセン（Donald James Larsen）は、1929年8月7日、アメリカのインディアナ州ミシガンシティに生まれたプロ野球選手で、投手として名を馳せました。右投右打の彼は、特にニューヨーク・ヤンキース時代に輝かしい業績を残し、その中でも1956年のワールドシリーズ第5戦で達成した完全試合が特に有名です。これはワールドシリーズ史上初めての快挙であり、2022年現在もポストシーズンで唯一の完全試合として記録されています。

経歴の始まり

ラーセンのプロキャリアは1953年にセントルイス・ブラウンズ（後のボルチモア・オリオールズ）で始まりました。しかし、フィールド外での遊びに夢中になりすぎて、なかなか結果を残せずにいました。1954年、オリオールズに移った彼は、悲劇的とも言える3勝21敗の成績を残し、アメリカン・リーグで最も多くの敗戦を記録しました。シーズン終了後、史上最多の17人が絡んだトレードでニューヨーク・ヤンキースに移籍します。

移籍後もラーセンの行動は変わらず、1955年にはスプリング・トレーニング中に事故を引き起こしました。この様子をヤンキースの監督ケーシー・ステンゲルは「彼は早すぎる時間に電報を出しに行ったのか？」と皮肉を口にしました。

完全試合の栄光

1956年、ラーセンは自己最多の11勝を上げ、ヤンキースのリーグ優勝に貢献しました。ワールドシリーズはヤンキースとブルックリン・ドジャースの対戦となり、ラーセンが先発した第5戦で歴史的な瞬間が訪れます。彼はドジャース打線を相手にワールドシリーズで初の完全試合を成し遂げ、その模様は多くのファンにとって永遠の記憶となりました。その試合はヤンキー・スタジアムで行われ、観衆は64,519人にのぼりました。2-0でヤンキースが勝利し、ラーセンはシリーズ最優秀選手（MVP）およびベーブ・ルース賞を受賞しました。

キャリアの転機と引退

1957年も10勝を記録しましたが、そこからは二桁勝利は達成できませんでした。ヤンキースでの3年間を経て、ラーセンはその後カンザスシティ・アスレチックス、シカゴ・ホワイトソックス、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ヒューストン・コルト45's（後のアストロズ）、そしてシカゴ・カブスへと移籍を重ねます。1967年に現役を引退するまで、彼はさまざまなチームでプレーしました。

晩年と遺産

ラーセンは、1999年にヤンキー・スタジアムで始球式を務め、この試合ではデビッド・コーンも完全試合を達成しました。彼は2018年にはオールドタイマーズ・デーに参加し、若手選手への激励の言葉を残しています。

2020年1月1日、ラーセンは食道がんにより90歳でこの世を去りました。彼の名前は、スポーツ史において決して消えることのない存在となり、その業績は多くの人々に語り継がれています。特に、ワールドシリーズでの完全試合は、野球ファンにとって永遠の栄光として心に刻まれています。

もう一度検索