ドーリャ (行政区画)

ドーリャ（Доля）について

ドーリャ（Доля）は、18世紀初頭の帝政ロシアにおいて用いられていた行政区画の単位です。この制度は、ピョートル1世の治世下、1710年に導入されました。当時、ロシア帝国の行政制度は変革期にあり、ピョートル1世は国家の効率的な運営を目指して様々な改革を断行していました。ドーリャの導入もその一環であり、より細分化された行政区分を設けることで、地方統治を強化し、税収の安定化を図る目的がありました。

ドーリャの役割と位置づけ

ドーリャは、グベールニヤ（ губерния, 県）という上位の行政区画の下に位置づけられました。グベールニヤは、現在の県に相当する広域的な行政単位であり、ドーリャはその下位区分として、より地域に密着した行政事務を担っていました。具体的にどのような行政事務が行われていたかは、当時の記録が残っている範囲でしか確認できませんが、徴税、治安維持、戸籍管理などが主な役割であったと考えられます。ドーリャは、行政の末端組織として、地域住民の生活に直接関わる重要な役割を果たしていました。

ドーリャの廃止とウエズドへの移行

しかし、ドーリャの制度は長くは続きませんでした。1775年、エカテリーナ2世の治世下で大規模な行政改革が行われ、その結果としてドーリャは廃止されることになりました。この改革の目的は、行政組織をより効率化し、中央集権的な統治を強化することでした。ドーリャは、行政区分としては複雑で、必ずしも効率的な統治には繋がらないと判断されたようです。

ドーリャの廃止に伴い、新たに導入されたのがウエズド（уезд）という行政区画です。ウエズドは、ドーリャよりも上位の区分として位置づけられ、グベールニヤの下でより広範な行政を担当することになりました。ウエズドへの移行は、ロシア帝国の行政制度をより合理的なものへと変革させる大きな転換点となりました。ウエズド制度は、その後、1917年のロシア革命まで長く維持されることになります。

まとめ

ドーリャは、帝政ロシアの行政区画の変遷において、短い期間ではありましたが重要な役割を果たした制度でした。ピョートル1世の改革によって導入され、地方統治の強化に貢献しましたが、エカテリーナ2世の改革によってより効率的なウエズド制度へと移行しました。ドーリャの歴史は、ロシア帝国の行政制度の変遷を理解する上で、不可欠な要素の一つと言えるでしょう。

参考文献

* Князьков С. «Очерки из истории Петра Великого и его времени». — Пушкино: «Культура», 1990 (репринтное воспроизведение издания 1914 года).

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