ドーン・アップショウ

ドーン・アップショウ

ドーン・アップショウ（Dawn Upshaw, 1960年7月17日 - ）は、アメリカ合衆国出身の著名なソプラノ歌手です。彼女は現代の声楽界において最も重要な演奏家の一人と広く認識されており、その卓越した技術と表現力は、批評家や聴衆はもとより、同時代の作曲家からも熱狂的な支持を受けています。特に、米国の主要なメディアである「ロサンゼルスタイムズ」紙は、彼女を「最も重要な演奏者の一人」と称賛したことがあります。

アップショウのキャリアは、古典から現代音楽に至るまで、極めて幅広いレパートリーに特徴づけられています。オペラ、歌曲、室内楽、オーケストラとの共演など、多様な形式で活動を展開しており、それぞれの分野で高い評価を得ています。特に、現代作曲家による新作の初演や、これまであまり知られていなかった作品の発掘・普及にも積極的に取り組んでおり、現代声楽作品の発展に大きく貢献しています。

彼女の功績は数々の受賞によっても裏付けられています。とりわけ、クラシック音楽界で最も権威ある賞の一つであるグラミー賞を幾度も受賞しており、その実力と影響力の大きさが示されています。主な受賞歴は以下の通りです。

1989年：グラミー賞 Best Classical Vocal Soloist
対象作品：バーバー『ノックスヴィル、1915年の夏』
1991年：グラミー賞 Best Classical Vocal Soloist
対象作品：The Girl With Orange Lips （現代歌曲集）
2003年：グラミー賞 Best Chamber Music Performance
対象作品：ベルク：抒情組曲
2006年：グラミー賞 Best Opera Recording
対象作品：Golijov: Ainadamar: Fountain Of Tears （ゴリホフ：アイナダマル）

これらの受賞歴は、彼女がソロ声楽作品にとどまらず、室内楽やオペラといった異なるジャンルにおいても傑出した成果を上げてきたことを物語っています。

演奏活動の傍ら、アップショウは教育者としても精力的に活動しています。2006年からは、ニューヨーク州にある名門バード大学の音楽院で、声楽部門の主任を務めています。ここでは、次世代の声楽家たちの育成に情熱を注ぎ、自身の豊富な経験と知識を伝えています。

また、彼女の多岐にわたる才能と創造性は、社会からも高く評価されています。2007年9月25日には、文化、芸術、科学などの分野で顕著な才能と将来性を持つ個人に贈られる、権威あるマッカーサー財団のフェローシップ（通称「天才助成金」）を受給しました。これは、彼女の芸術活動が社会に与える影響の大きさと、今後の活躍への期待を示すものです。

私生活においては、結婚しており、二人の子供の母親でもあります。現在は、家族と共にニューヨーク近郊に居を構え、音楽活動と家庭生活を両立させています。

ドーン・アップショウは、その類稀なる歌唱力と表現力、そして現代音楽への深い理解と貢献によって、20世紀後半から21世紀にかけての声楽界において揺るぎない地位を確立しています。彼女の演奏は、常に聴衆に深い感動と新たな発見をもたらし続けています。

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