ドー・クォン

クォン・ドヒョン

クォン・ドヒョン（권도형、権渡衡、通称ドー・クォン、1991年9月6日生）は、韓国出身の暗号資産開発者であり、シンガポールに拠点を置くTerraform Labsの共同設立者および最高経営責任者（CEO）を務めていました。Terraform Labsは、Terraブロックチェーンを開発し、特に米ドルとの連動を目指したアルゴリズム型ステーブルコインTerraUSD（UST）と、その安定化を担うネットワークトークンTerra（LUNA）を手掛けました。しかし、2022年5月にUSTとLUNAは価格が暴落し、市場から約450億ドル近い価値が失われるという、暗号資産市場史上でも類を見ない規模の崩壊を引き起こしました。

経歴

大元外国語高等学校を卒業後、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学び、2015年6月に卒業しました。AppleとMicrosoftでのエンジニア経験を経て、2015年9月に韓国で起業しました。かつては、別の失敗したステーブルコインプロジェクトBasis Cashの創設者でもあったと指摘されています。

Terraプロジェクトの構造と崩壊

クォン氏が共同開発したTerraブロックチェーンは決済インフラとしての利用を目指しました。中心となるUSTは、米ドル担保ではなく、USTとLUNAの相互発行・焼却を通じて価格を維持する「アルゴリズム型」を採用。USTの保有者には、Anchor Protocolを通じて年間約19%という高利回りが提供されましたが、この設計の持続性や安全性を巡っては、一部からポンジースキームに類するとの批判も呈されていました。

クォン氏自身は、批判者に対して公然と嘲笑するなど、物議を醸す挑発的な言動で知られていました。

こうした状況の中、2022年5月、USTの米ドルペッグは崩壊しました。UST価格の維持のためにLUNAが大量に発行された結果、LUNAの価格も暴落し、事実上無価値となりました。このUST/LUNAの連鎖的な崩壊は、多くの投資家に甚大な損失をもたらし、暗号資産業界全体に深刻な影響を与えました。

崩壊後の影響と法的問題

崩壊後、巨額の損失を被った投資家による反発は社会問題化しました。約200万ドルを失ったと主張する個人投資家がクォン氏の自宅に侵入する事件も発生し、警察の捜査対象となりました。また、その影響の大きさから、メディアでは詐欺事件で知られるセラノスの創業者エリザベス・ホームズと比較されることもありました。

法的側面では、崩壊以前から米国SECがTerraform Labsとクォン氏に対する調査を進めていました。SECの召喚状に対し、クォン氏は提訴という形で抵抗しましたが、裁判所はSECの調査権限を認めました。崩壊直前には、クォン氏が韓国企業の解散を申請しています。

韓国国内でも、多数の投資家が損害を被ったことから集団訴訟が提起される方針が表明され、多くの投資家が参加を表明しました。また、韓国国会では一連の事態について公聴会開催の可能性が議論され、関連法規の整備不足が課題として浮上しました。さらに、韓国国税庁の調査により、クォン氏らに対し約1億ドルに及ぶ追加課税が通知されていたことも明らかになっています。

クォン氏とTerra/Lunaの崩壊は、アルゴリズム型ステーブルコインの構造的脆弱性を浮き彫りにし、暗号資産規制、特にステーブルコイン規制に関する国際的な議論を加速させる大きな契機となりました。

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