ナイトハルトゴムばね

ナイトハルトゴムばね：接着剤不要の革新的ばね機構

ナイトハルトゴムばねは、スイス人技術者ヘルマン・J・ナイトハルト氏によって発明された特殊なゴムばねです。1947年には複数の国で特許を取得し、1952年には彼の息子によって日本にも紹介されました。一般的なゴムばねとは異なり、接着剤を使用せずにゴムと金属部品を組み合わせる独自の構造が特徴です。

独自の構造とばね特性

一般的なゴムばねは、防振ゴムと金属製の金具を接着剤で固定するものが一般的です。これに対し、ナイトハルトゴムばねは円筒形または円環状のゴムを金属製の金具で挟み込み、ゴムを転がすことでばね作用を生み出します。この構造により、ゴムのせん断歪みに制限されることなく、大きなストロークを実現することが可能です。

この独特の構造は、いくつかの利点をもたらします。まず、大きなストロークが可能です。接着剤を使用しないため、ゴムの変形に制限がなく、より大きな伸縮運動が実現できます。また、ばね定数はストロークに比例して増加する非線形特性を示します。これは、用途に応じてばねの特性を調整できる柔軟性を提供します。さらに、ゴムと金具の摩擦によるヒステリシス（履歴現象）も発生します。これは、振動を抑制する効果に繋がります。

多様な用途と呼び名

ナイトハルトゴムばねは、その高い性能から、様々な分野で活用されています。

特に自動車分野では、初期の車両サスペンションに採用された実績があります。例えば、マツダのR360クーペでは、ねじりばねタイプのナイトハルトゴムばねがサスペンションに使用されていました。

鉄道車両分野では、「ロールゴム」という名称で広く知られています。国鉄（現JR）のTR908台車やTR908A台車、JR四国2000型台車、相模鉄道8000型台車など、制御付き振り子台車に多く採用されており、車両の安定走行に貢献しています。これらの台車では、車両の傾きを制御する重要な役割を担っています。

ナイトハルトゴムばねのメリットとデメリット

メリット:

大きなストロークが可能
非線形特性による柔軟な応用
ゴムと金属の摩擦による優れた減衰特性
接着剤を使用しないため、耐久性が高い（接着不良による故障が少ない）

デメリット:

設計が複雑になる可能性がある
非線形特性のため、設計計算が複雑になる可能性がある
* ゴムの劣化による性能低下

まとめ

ナイトハルトゴムばねは、その独自の構造と優れた特性により、自動車や鉄道車両など、幅広い分野で活躍する重要な技術です。大きなストロークと非線形特性、そして優れた減衰特性は、現代の高度な機械設計においても重要な役割を果たしています。今後も、様々な分野での更なる活用が期待されます。

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