ナイトラス・オキサイド・システム

亜酸化窒素噴射システム(NOS)とは？

[亜酸化窒素]]噴射システム、一般的にNOSとして知られるシステムは、エンジンに亜酸化窒素]を噴射し、出力を向上させる装置です。元々は第二次世界大戦中の[[ドイツ空軍が航空機のエンジン冷却と高高度での出力低下抑制のために開発した技術を起源とし、現在では主に自動車のチューニングにおいて使用されています。

NOSの仕組み

NOSは、高圧で液化された亜酸化窒素をエンジンに噴射します。高温の燃焼室内で亜酸化窒素は分解し、酸素を放出します。この追加の酸素によって、より多くの燃料を燃焼させることが可能になり、エンジンの出力が向上します。

この仕組みは、スーパーチャージャーやターボチャージャー'>[過給機]と似ていますが、NOSは酸素分圧を選択的に高めることで出力向上を図る点が異なります。過給機は吸気を圧縮することで酸素濃度を高めますが、NOSは直接酸素を供給します。

さらに、亜酸化窒素の気化に際して気化熱が奪われるため、エンジンの冷却効果も期待できます。これはインタークーラーと同様の効果と言えるでしょう。一部システムでは、インタークーラーへの直接噴射による冷却効率向上も実現しています。

理論上は、同排気量で通常時の約247.5%の出力が得られると計算されますが、実際には吸気を完全に置き換えるわけではないため、約150%程度の出力向上となります。

噴射方式の種類

NOSシステムは、大きく分けて以下の3種類の噴射方式があります。

ドライショット: 亜酸化窒素ガスのみを吸気管またはインテークマニホールドに噴射する方式です。燃料はエンジンの既存システムに依存するため、パワーアップの上限は低めです。
ウェットショット: [亜酸化窒素]]ガスと同時に燃料も噴射する方式です。N₂Oと燃料の噴射量を調整することで、理想的な[[空燃比]を実現し、より精密な制御が可能です。最も一般的な方式です。
* ポートショット: 各シリンダーに個別の噴射口を設け、亜酸化窒素を直接噴射する方式です。ドライショットと同様、燃料は既存システムを使用しますが、シリンダーごとの噴射量を均一に制御できるため、燃焼状態の均一性が高く、パワー上限も高く、エンジンのコンディション管理もしやすいことから、競技用途では主流となっています。

その他にも、純正インジェクターの噴射時間を延長することでウェットショットと同等の効果を得る方式や、専用の制御ユニットを用いて点火時期や燃調を最適化する方式など、様々なバリエーションが存在します。

日本におけるNOS

日本では、主にドリフト競技においてNOSの使用が盛んでした。しかし、安全性の観点から、D1グランプリなどでは2014年から使用が禁止されています。競艇においても、かつてはNOSに相当する装置の開発が行われたものの、実用化には至っていません。

亜酸化窒素ガスの取り扱い

NOSシステムに使用される亜酸化窒素ガスは、液化状態で充填しなければなりません。そのため、専用の充填器が必要となり、通常はガス会社から小売業者を通じてユーザーへ販売されています。個人での充填設備の整備も一部愛好家には見られます。

亜酸化窒素の販売規制

亜酸化窒素は、NOS以外にも様々な用途で使用されていますが、近年は乱用が問題視され、2015年頃から販売規制が強化されました。しかし、NOS用途の亜酸化窒素は、医療や産業用途などとは区別され、規制の対象外となっています。

主なメーカー

NOS、NX（ナイトラスエクスプレス）、VENOM（ベノム）、エーデルブロック、ZEX（ゼックス）、ナイトラスワークスなど、複数のメーカーがNOSシステムを製造・販売しています。