ナイルパーチ

ナイルパーチ：巨大魚がもたらす光と影

ナイルパーチ（学名: Lates niloticus）は、アフリカ大陸の熱帯地域に生息するアカメ科の大型魚類です。現地では重要な食用魚として、また観賞魚としても広く知られています。

概要

ナイルパーチは、最大で全長2メートル、体重200キログラムに達する巨大な淡水魚です。日本の固有種であるアカメ (L. japonicus) と近縁で、外見もよく似ています。セネガル川、ニジェール川、ナイル川といったアフリカの主要な河川や塩湖、汽水域に生息し、肉食性で小魚や甲殻類などを捕食します。

生態系への影響

ナイルパーチは、水産資源としての価値が高く、漁獲量向上のためアフリカ各地に放流されました。しかし、この放流が各地で深刻な生態系への影響を引き起こしています。特に有名なのはヴィクトリア湖の事例です。ナイルパーチの導入によって、固有種のシクリッドなど多くの魚類が激減・絶滅し、それらを食料としていた微細藻類が異常繁殖してアオコが発生するなど、生態系のバランスが大きく崩れてしまいました。この問題は、IUCN（国際自然保護連合）の「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定されています。

日本では、かつて観賞魚として輸入・流通していましたが、2016年10月1日以降、環境省によって特定外来生物に指定され、生きたままの輸入は原則禁止となりました。ただし、食用として加工されたものや、死亡した状態での輸入は現在も認められています。

利用

ナイルパーチは、癖のない白身で美味しく、食用としての需要が非常に高い魚です。ヨーロッパや日本へ多く輸出されており、日本ではフライ用の白身魚として「白スズキ」などの名前でレストランや給食で提供されています。また、スズキの代用魚として回転寿司のネタや小売店で販売されることもあります。

かつては「スズキ」や「白スズキ」として販売されていましたが、2003年のJAS法改正以降は、これらの名称での販売は禁止されました（外食や加工品は除く）。

ダーウィンの悪夢

ヴィクトリア湖におけるナイルパーチの養殖から派生する社会問題を扱ったドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』は、数々の映画賞を受賞しましたが、一方で事実誤認や政治的なプロパガンダであるとの批判も存在し、賛否両論を呼んでいます。

古代エジプトとの関わり

ナイルパーチは、古代エジプトにおいてミイラにされた魚としても知られています。

まとめ

ナイルパーチは、食用として重要な資源である一方、生態系への影響という深刻な問題を抱えています。その利用と管理には、慎重な配慮が求められています。

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