ナイロン・カーテン

『ナイロン・カーテン』（The Nylon Curtain）は、ビリー・ジョエルが1982年に発表した8作目のスタジオ・アルバムです。全米アルバムチャートで7位を記録し、商業的にも成功を収めました。

制作背景

1982年4月15日、ビリー・ジョエルはオートバイ事故で骨折し入院しました。その際、病室にあったナイロン製のカーテンを見て、アルバムのタイトルを『ナイロン・カーテン』とすることを決定しました。このタイトルには、当時の社会に対する閉塞感や、人々の間に存在する見えない壁といった意味合いが込められていると考えられます。

収録曲とテーマ

アルバムからは、「プレッシャー」「アレンタウン」「グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌」の3枚のシングルがリリースされました。

プレッシャー: 現代社会におけるプレッシャーやストレスを描いた楽曲で、全米20位を記録しました。
アレンタウン: ペンシルベニア州の工業都市アレンタウンの衰退と貧困、そしてそこで懸命に生きる人々を歌った曲です。全米17位を記録し、社会的なメッセージ性の強い楽曲として評価されました。
グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌: ベトナム戦争に駆り出された兵士の視点から歌われた反戦歌です。ローリング・ストーン誌は、「ベトナム戦争に対する、ポップ・ミュージックによる究極の碑文として記憶されるだろう」と評しました。全米56位。

これらの楽曲に代表されるように、『ナイロン・カーテン』は、社会問題や政治的なテーマを積極的に取り入れた作品となっています。ビリー・ジョエルは、このアルバムを通して、当時のアメリカ社会が抱える問題に警鐘を鳴らそうとしたと考えられます。

ビリー・ジョエルの自信作

ビリー・ジョエル自身も本作に強い思い入れがあり、発表当時には「僕にとっての『サージェント・ペパーズ』」とコメントしていました。実験的なサウンドや、社会的なテーマを扱った歌詞など、これまでのビリー・ジョエルの作品とは異なる新たな一面を見せた作品として、高く評価されています。

参加ミュージシャン

ビリー・ジョエル - ボーカル、ピアノ、シンセサイザー、ハモンドオルガン、メロディカ
ダグ・ステッグマイヤー - ベース
リバティ・デヴィート - ドラムス、パーカッション
デヴィッド・ブラウン - リードギター
ラッセル・ジェイヴァース - リズムギター
ビル・ザンピノ - フィールド・スネア(on 4.)
ロブ・マウンジー - [シンセサイザー]
ドミニク・コルテーゼ - [アコーディオン]
チャールズ・マクラッケン - [チェロ]
エディ・ダニエルス - サックス、[クラリネット]
デイヴ・グルーシン - ストリングス&ホーン・アレンジ
* デヴィッド・ナディアン - コンサート・マスター

収録曲

全曲ビリー・ジョエル作詞作曲。

1. アレンタウン - "Allentown" - 3:51
2. ローラ - "Laura" - 5:04
3. プレッシャー - "Pressure" - 4:41
4. グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌 - "Goodnight Saigon" - 7:03
5. シーズ・ライト・オン・タイム - "She's Right on Time" - 4:14
6. ふたりだけのルーム - "A Room of Our Own" - 4:02
7. サプライズ - "Surprises" - 3:26
8. スカンジナヴィアン・スカイ - "Scandinavian Skies" - 5:58
9. オーケストラは何処へ? - "Where's the Orchestra?" - 3:17

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