ナイン・ライヴズ (スティーヴ・ウィンウッドのアルバム)

ナイン・ライヴズ

『ナイン・ライヴズ』（Nine Lives）は、イギリスを代表するロック・ミュージシャン、スティーヴ・ウィンウッドが2008年にリリースした通算9枚目にあたるスタジオ・アルバムです。長年活動を続ける彼が、新たにコロムビア・レコードと契約を結んでから初めて発表した作品となります。

制作背景

本作の録音にあたっては、従来の多重録音とは異なり、あたかもライブ演奏をするかのようなスタジオ・ライヴ形式が採用されました。これは、個々のパートを別々にレコーディングするのではなく、バンド全体での同時演奏を重視した手法です。ウィンウッド自身は、当初の構想として前作『アバウト・タイム』の延長線上にある作品を考えていたようですが、バンドメンバーとの共同作業によって、最終的に「より自然で有機的な感覚」がアルバム全体に宿ったと述べています。ただし、収録曲のうち「アイム・ノット・ドロウニング」に関しては、ウィンウッドひとりで全ての楽器を演奏した異色の楽曲となっています。

ゲスト参加

アルバムの中でも特に注目されるのは、「ダーティ・シティ」にブラインド・フェイス時代の旧友であるエリック・クラプトンがゲスト参加している点です。二人の交流はこの時期特に活発で、本作のリリースに先行して、2007年5月19日にはウィンウッドのライブにクラプトンがゲスト出演、同年7月28日にはクラプトン主催のクロスロード・ギター・フェスティヴァルにウィンウッドが招かれました。さらに、本作の発表に先立つ2008年2月には、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで大規模な共演ライブが実現。このライブの模様は後に、クラプトンとウィンウッドの連名によるライブ・アルバム『ライヴ・フロム・マディソン・スクエア・ガーデン』として正式に発表されています。

商業的評価

本作は批評家筋から概ね好評を得ただけでなく、商業的にも成功を収めました。ウィンウッドの母国であるイギリスでは、2008年5月17日付の全英アルバムチャートで31位にランクインしました。アメリカでは、より顕著な成績を残しています。Billboard 200チャートで最高位12位に達し、これは1990年にリリースされたアルバム『リフュジーズ・オブ・ザ・ハート』以来、実に18年ぶりのトップ40入りとなる快挙でした。

収録曲

以下にアルバムに収録された楽曲リストを示します。

1. アイム・ノット・ドロウニング - "I'm Not Drowning" (Steve Winwood, Peter Godwin) – 3:32
2. フライ - "Fly" (S. Winwood, P. Godwin, José Pires de Almeida Neto) – 7:49
3. レイジング・シー - "Raging Sea" (S. Winwood, P. Godwin, J. Neto) – 6:17
4. ダーティ・シティ - "Dirty City" (S. Winwood, P. Godwin) – 7:44
5. ウィアー・オール・ルッキング - "We're All Looking" (S. Winwood, P. Godwin) – 5:25
6. ハングリー・マン - "Hungry Man" (S. Winwood, P. Godwin, J. Neto) – 7:07
7. シークレッツ - "Secrets" (S. Winwood, P. Godwin, J. Neto) – 6:41
8. アット・タイムズ・ウィ・ドゥ・フォーゲット - "At Times We Do Forget" (S. Winwood, P. Godwin, J. Neto) – 5:57
9. アザー・ショア - "Other Shore" (S. Winwood, P. Godwin, J. Neto) – 6:41

参加ミュージシャン

このアルバムには以下のミュージシャンが参加しています。

スティーヴ・ウィンウッド - ボーカル、ハモンドオルガン、ギター、パーカッション
ホセ・ピレス・デ・アウメイダ・ネト - ギター (トラック2, 3, 6, 7, 8, 9)
エリック・クラプトン - ギター・ソロ (トラック4)
ティム・キャンズフィールド - ギター (トラック6)
リチャード・ベイリー - ドラムス
カール・ヴァン・デン・ボッシュ - パーカッション
* ポール・ブース - フルート、サクソフォーン、ホイッスル

本作は、円熟期を迎えたスティーヴ・ウィンウッドが、盟友との共演や新たな制作アプローチを取り入れ、高い評価と商業的成功を収めた意欲的な一枚と言えるでしょう。

もう一度検索