ナガバコバンモチ

ナガバコバンモチ（Elaeocarpus multiflorus）

ナガバコバンモチは、ホルトノキ科に所属する常緑高木で、その優雅な姿が特徴的です。この樹木は、主に台湾とフィリピンに分布しており、日本では八重山の石垣島と西表島にのみ見られます。ナガバコバンモチの姿は、自然の中で独特の存在感を放っています。

特徴

この植物は常緑性で、高さはかなりのものになります。葉は互生で、枝の先端に集まって配置され、葉柄はおおよそ2〜4cmの長さがあります。この葉柄の先端部分はわずかに膨らんでおり、その先につながる葉身は倒卵状楕円形をしています。葉の長さは6〜12cm、幅は3〜6cmで、縁には尖らない鋸歯が控えめに並んでいます。これらの葉は、裏面には無毛で、側脈は9〜11対あり、細脈がはっきりと裏面に見えます。

ナガバコバンモチの花は両性であり、総状花序として多く集まります。花序は前年の枝の葉腋から伸び、長さは5〜9cm程度です。花柄は長さが5〜10mmで、白い絹毛が密生しています。各花は5枚の狭披針形の萼片を持ち、先端は鋭く、長さは約5〜6mmです。花弁も5枚で、広倒披針形で先端はわずかに狭くなり、2〜3個の小突起があります。これらの花弁の外側にも多くの絹毛があります。

おしべは多数あり、長さは約4mmで、葯は線形で、長さは2.5〜3mmです。葯は先端から中央部にかけて縦に開いており、花弁よりもやや短い位置にあります。果実は楕円形で、成熟すると青くなり、長さは約1.5cmです。

分布

ナガバコバンモチの生息地は限られており、特に八重山諸島においては、独自の生態系を形成しています。南国特有の環境に適応したこの樹木は、周囲の自然と調和しながら成長しています。日本国内での分布は非常に限定的で、市街地からは離れた自然環境の中でのみ観察されます。

類似種

ホルトノキ属には世界中で約200種が存在しますが、日本にはそのうちの4種のみが知られています。例えば、ホルトノキ（E. sylvestris）は葉の形状が細長く、葉柄が短いため、見た目が異なる一方、コバンモチ（L. japonicus）はナガバコバンモチに似ているものの、葉が長めで側脈の数が少なく、果実のサイズも小さいという違いがあります。また、コバンモチは雌雄異株であるため、繁殖方法にも違いがあります。

保全状況評価

ナガバコバンモチは、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IB類（EN）に分類されています。2007年までは準絶滅危惧に指定されていましたが、2012年以降はその評価が引き上げられました。この背景には、個体数の減少や生息環境の劣化が影響していると考えられます。保全に向けた取り組みが求められる重要な樹木です。

参考文献

• - 佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠夫、『日本の野生植物　木本II』、(1999)、平凡社
• - 初島住彦『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会

ナガバコバンモチは、その特異な姿と生息地の希少性から、私たちにとって大切な存在であり、今後の保全活動が期待されます。

もう一度検索