ホルトノキ

ホルトノキ（Elaeocarpus zollingeri var. zollingeri）

ホルトノキは、ホルトノキ科ホルトノキ属の常緑高木です。別名モガシとも呼ばれ、その和名は「ポルトガルの木」に由来します。これは、江戸時代の学者、平賀源内が本種をオリーブと誤認したことがきっかけで、その名前が定着しました。

名称の由来

平賀源内は、紀州（現在の和歌山県）で「ホルトカル」という木がオリーブ油（ホルト油）の採れる木だと紹介したのが名前の由来です。実際には、ホルトノキはオリーブとは異なる日本在来の植物です。この誤認は、当時の植物に関する知識がまだ十分でなかったことを示しています。源内がオリーブと間違えた深専寺（和歌山県湯浅町）のホルトノキは、残念ながら枯れてしまいましたが、彼が栗林公園（香川県高松市）に植えたホルトノキは今も現存しています。

多様な別名

ホルトノキは、地域によって様々な名前で呼ばれており、モガセ、モガシ（鹿児島）、タラシ（沖縄）、マガゼ（福岡県）、チンギ（奄美大島）などがあります。また、ハボソノキ、シヒドギ、スグノキ、イヌヤマモモ、ヅク、ツミ、ズミ、ハボウ、シイドキ、シラキ、ヅクノキといった別名も記録されています。これらの別名は、地域の人々がそれぞれの視点でホルトノキを捉え、生活の中で利用してきたことを示しています。

分布

ホルトノキは、日本では本州の千葉県以西の太平洋沿岸、淡路島、四国、九州、沖縄に分布しています。国外では、台湾、インドシナなどにも見られます。特に、本州以西の西南日本では照葉樹林の重要な構成樹であり、各地の社寺林では巨木が見られます。暖地ではごく普通に見られ、街路樹や公園樹としても利用されています。

特徴

ホルトノキは、常緑広葉樹の高木で、高さは15〜20mに達します。葉は互生し、枝先に束のように集まって生えます。葉身は長さ5〜12cmの倒披針形または長楕円形で、ヤマモモに似た鋸歯があり、厚みがあるのが特徴です。古い葉は、落葉前に赤く紅葉し、一年を通して一部の葉が紅葉しているように見えます。花期は7〜8月頃で、白い釣り鐘状の花が横に伸びた花茎に穂状につきます。果実は長さ1.2〜2cmの楕円形で、11〜2月に黒紫色に熟します。見た目はオリーブの実に似ていますが、小型で油は採れません。

栽培と利用

ホルトノキの植栽適期は、3月下旬〜5月上旬、6月中旬〜7月中旬、または9月とされています。街路樹や庭木として植えられ、その美しい樹姿が親しまれています。また、樹皮や枝葉の煎汁は、織物の黒色染料として利用され、特に奄美大島の大島紬の染色に用いられます。第一次世界大戦中には、輸入染料の不足から、秩父の織物業者がホルトノキのタンニンを利用した黒色染料「大黒エキス」を開発し、その利用価値が再認識されました。

都道府県・市区町村の木／花

ホルトノキは、以下の自治体で「市の木」として指定されています。

徳島県：徳島市
大分県：大分市
沖縄県：浦添市

かつては、広島県豊浜町、香川県志度町、佐賀県鎮西町、長崎県野母崎町などでも指定されていましたが、これらの自治体は合併などにより消滅しています。

関連事項

ホルトノキに関連する事項として、以下のものがあります。

オリーブ: ホルトノキがオリーブと誤認された経緯から、比較対象として挙げられます。
ホルトホール大分: 大分県大分市にある複合施設で、市の木であるホルトノキにちなんで名付けられました。
五徳のホルトノキ: 樹齢の長い巨木。
* ホルトソウ : トウダイグサ科の草本。有毒植物。

ホルトノキは、その歴史や文化、そして自然との関わりを通して、私たちの生活に深く根ざした植物と言えるでしょう。

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