ナギナタコウジュ

ナギナタコウジュ：薬効と歴史を持つ芳香植物

ナギナタコウジュ(学名: Elsholtzia ciliata)は、シソ科に属する一年草です。日本列島を含む東アジアの温帯地域に広く分布し、山野の道端などで見かけることができます。名前の由来は、秋の開花期に花穂が一方に傾いて伸びる様子が、薙刀（なぎなた）に似ていることからきています。

植物の特徴

ナギナタコウジュは、高さ30～60cmに成長する草本植物です。茎は四角形で、全体に柔らかな毛が生えています。葉は対生し、卵形から長卵形で、縁にはギザギザ（鋸歯）があります。特徴的なのはその香りで、全草から強い香りが放たれます。

開花期は秋（9～10月）です。枝の先や葉の付け根から花穂が伸び出し、淡紅紫色の小さな花を多数つけます。花は穂の下の方から順に咲き上がり、花穂全体が薙刀のように一方に傾いていく様子が観察できます。花冠の長さは約5mmで、多くの毛が生えています。

薬効と利用

ナギナタコウジュは、古くから薬草として利用されてきました。秋の開花期に地上部全体を刈り取り、日陰で乾燥させたものを「香薷（こうじゅ）」と呼びます。

香薷には、利尿作用や発汗促進作用があり、風邪、むくみ、吐き気、下痢、脚気、夏バテなどに効果があるとされています。民間療法では、乾燥させた全草を煎じて服用するほか、うがい薬や浴湯料としても利用されてきました。

具体的な民間療法としては、乾燥させたナギナタコウジュ10～15gを水500ccで半量になるまで煎じ、1日3回に分けて服用する方法が知られています。また、口臭予防には煎じ液でうがいをする、入浴時には200gほどの香薷を布袋に入れて煮出した汁を浴槽に加えるといった方法もあります。

アイヌ文化においても、ナギナタコウジュ（アイヌ語名：セタエント）は重要な植物でした。乾燥させたものを煮出して、お茶として飲用していた記録が残っています。

まとめ

ナギナタコウジュは、独特の香りと薬効を持つ魅力的な植物です。その薬効は古くから認められ、民間療法で広く活用されてきました。日本の山野に自生する身近な植物ですが、その歴史と薬効を理解することで、より深く自然と関わるきっかけとなるでしょう。今後、さらなる研究によって、ナギナタコウジュの薬理作用に関する知見が深まることが期待されます。

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