ナクサ

ナクサ

ナクサ（النكسة、al-naksaまたはan-naksa）は、アラビア語で「挫折」「敗北」「後退」といった意味を持つ言葉であり、パレスチナの歴史において、1967年の第三次中東戦争（イスラエル側で「六日戦争」と呼ばれる）とその直後に経験した深刻な苦難を指します。

具体的には、この戦争によってイスラエルが新たに占領した地域から、約28万人から32万5千人におよぶ多数のパレスチナ人が、故郷や土地を離れざるを得なくなった強制的な移動や追放の出来事を指します。この過程で、イムワス、ヤロ、バイト・ヌバ、スリト、ベイト＝アワ、ベイト＝ミルセム、シュユーフ、アル＝ジフトリク、アガリス、フセイラトといった多くのパレスチナ人村落が破壊され、アカバト・ジャベルやエイン・エッ＝スルタンといった難民キャンプも無人化されました。また、ナクサはイスラエルで「六日戦争」と呼ばれる第三次中東戦争そのものを指す、パレスチナ側からの名称としても用いられることがあります。

歴史的背景と影響

ナクサを理解するためには、その背景にある中東地域の歴史、特にパレスチナにおける紛争の経緯を知る必要があります。1948年の第一次中東戦争の結果、イスラエルは当時のイギリス委任統治領パレスチナのおよそ78パーセントの地域を支配下に置きました。残りの約22パーセントは、ヨルダン（ヨルダン川西岸地区と東エルサレムを含む）とエジプト（ガザ地区）の管理下に置かれていました。

1967年6月に勃発した第三次中東戦争では、イスラエルはシリア、エジプト、ヨルダンを相手に戦いました。この戦争はわずか6日間で終結しましたが、その結果は地域に大きな変化をもたらしました。イスラエルはこの短期間の戦闘で、それまでヨルダンとエジプトが管理していた残りのパレスチナ地域、すなわち東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区を占領しました。さらに、シリアのゴラン高原とエジプトのシナイ半島も掌握しました。

この新たな占領によって、パレスチナ人の大規模な避難と追放が再び発生しました。1967年12月までに、約24万5千人のパレスチナ人がヨルダン川西岸地区とガザ地区から隣国ヨルダンへ避難しました。ガザ地区からは約1万1千人がエジプトへ移り、ゴラン高原からはパレスチナ人およびシリア人合わせて約11万6千人がシリアへ避難しました。これらの人々の多くは、再び難民としての生活を余儀なくされました。

ナクサによる影響は、パレスチナ人の居住状況を根本的に変えました。1967年以前は、全パレスチナ人の約半数が旧委任統治領パレスチナの境界内に居住していましたが、ナクサ以降は、その大多数が自らの故郷である土地の領域外で生活することを余儀なくされる状況となりました。さらに、1967年の難民の中には、1948年の第一次中東戦争ですでに故郷を追われていた人々、約14万5千人も含まれており、彼らは二度目の強制的な移動を経験することになったのです。

ナクサの日

ナクサは、パレスチナの人々にとって忘れられない歴史的な出来事として記憶されています。毎年6月5日は「ナクサの日」として記念され、1967年に経験した強制的な移動や故郷からの追放といった苦難を思い起こし、パレスチナ人の権利回復への決意を新たにする日となっています。この日は、パレスチナ問題の継続とその解決の必要性を国際社会に訴える機会ともなっています。

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