ナサニエル・クリフトン

ナット・クリフトン：人種の壁を越えたパイオニア

ナット・クリフトン（Nathaniel "Nat" Clifton、1922年10月23日 - 1990年8月31日）は、NBAの歴史において重要な役割を果たした人物です。アーカンソー州リトルロックで生まれ、イリノイ州シカゴで育った彼は、バスケットボール選手としてだけでなく、野球選手としても才能を発揮しました。ザビエル大学ルイジアナ校に進学後、第二次世界大戦に従軍するという経験もしています。

ハーレム・グローブトロッターズでの活躍

終戦後、クリフトンは全選手が黒人のエキシビジョンチーム、ニューヨーク・ルネッサンスやハーレム・グローブトロッターズでプレイしました。特にグローブトロッターズでの卓越したボールハンドリングは、彼の評価を大いに高め、後のNBA入りへと繋がる重要なステップとなりました。また、バスケットボールのオフシーズンには、ニグロリーグのシカゴ・アメリカン・ジャイアンツで一塁手としても活躍しました。

NBA初の黒人選手として

1950年、クリフトンはNBAドラフトでニューヨーク・ニックスから指名を受けました。この年のドラフトでは、チャック・クーパー、アール・ロイドらも指名されましたが、クリフトンは彼らの中で最も早く契約を結び、NBA史上初の正式契約を結んだ黒人選手となりました。これは、NBAにおける人種の壁を打ち破る画期的な出来事でした。

ニックスでの活躍

ルーキーイヤーとなった1950-51シーズン、クリフトンは平均8.6得点7.6リバウンドを記録。翌シーズンには平均10.6得点11.8リバウンドと、ダブル・ダブルを達成しました。その後も、平均10得点10リバウンド前後を安定して記録し、インサイドの要であるハリー・ギャラティンを支え、チームに大きく貢献しました。ニックスはクリフトンの活躍もあり、1950-51シーズンから3シーズン連続でファイナルに進出しましたが、優勝には手が届きませんでした。1954-55シーズンには、35歳にしてオールスターに初選出。これは、オールスター初選出選手の最年長記録となっています。

デトロイト・ピストンズへ

1955年、クリフトンはデトロイト・ピストンズとの大型トレードで、5シーズンを過ごしたニックスを離れることになりました。当時すでにリーグ最年長クラスだった彼は、ピストンズで1シーズンプレイした後、NBAを引退しました。

NBA通算成績は、5シーズン544試合に出場し、5,444得点（平均10.0得点）、4,469リバウンド（平均8.2リバウンド）でした。

引退後もスポーツ選手として活躍

NBA引退後も、クリフトンは現役スポーツ選手として活動を続けました。1958年の夏にはニグロリーグに戻り、デトロイト・クラウンズでプレイ。1961年からはABL（American Basketball League）のシカゴ・メジャーズでプレイし、ABLが消滅する1962年まで現役を続けました。40歳で現役を引退。

社会への貢献とレガシー

引退後、クリフトンは地域社会への貢献が高く評価され、ニューヨーク市の黒人慈善組合は『ブラック・ヒストリー・メイカー・アワード』の中に『ナサニエル"スウィートウォーター"クリフトン賞』を設立しました。また、2005年にはニューヨーク・ニックスが運営する『シティー・スピリッツ賞』が『スウィートウォーター・クリフトン・シティー・スピリッツ賞』に改称されました。

1990年8月31日、クリフトンは67歳でこの世を去りましたが、彼の功績は永遠に語り継がれるでしょう。"Sweetwater"の愛称で親しまれた彼の大きな手（手袋のサイズはアメリカサイズで『14』）と、バスケットボール界におけるパイオニアとしての精神は、多くの人々に勇気を与え続けています。

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