ナサリン

ナサリン

『ナサリン』（Nazarín）は、偉大な映画監督ルイス・ブニュエルが1959年に世に送り出したメキシコ映画です。本作は人間のあり方を鋭く問いかける風刺劇として知られています。スペイン語での原題は「Nazarín」であり、公開当時、その独創的な内容で注目を集めました。

映画史における評価

ブニュエル監督の膨大なフィルモグラフィーの中では、必ずしも一般に広く知られている作品とは言えないかもしれません。しかし、『ナサリン』は映画批評家や熱心な映画ファンの間では非常に高い評価を受けている作品です。その証拠として、この映画は発表された年である1959年に開催された第12回カンヌ国際映画祭において、栄えある国際賞を受賞しました。これは、ブニュエル監督の芸術性が国際的に認められた重要な出来事でした。

さらに、ロシアの巨匠として知られる映画監督アンドレイ・タルコフスキーは、自身の選ぶ映画史上の傑作リスト、いわゆる「オールタイム・ベスト10」の中にこの『ナサリン』を含めています。これは、タルコフスキーのような影響力のある監督が、本作に深い感銘を受け、その芸術的価値を極めて高く評価していたことを示しています。

アカデミー賞への挑戦と近年の再評価

『ナサリン』は、第32回アカデミー賞の外国語映画部門において、メキシコ代表作品としてエントリーされました。惜しくも最終的なノミネートには至りませんでしたが、当時のメキシコ映画界を代表する作品として選出されたことは、その質の高さを物語っています。

時代を超えて評価される本作は、近年でも再び光を浴びています。2019年4月に開催された第72回カンヌ国際映画祭では、過去の名作を上映する特別部門「カンヌ・クラシックス」のラインナップに選定され、多くの観客に再びその姿を見せる機会を得ました。これは、『ナサリン』が単なる過去の遺産ではなく、現代においても鑑賞に値する普遍的な魅力を持っていることの証と言えるでしょう。

まとめ

『ナサリン』は、ルイス・ブニュエル監督によるメキシコ時代の傑作の一つであり、人間の信仰や倫理観、そして社会の偽善をシニカルに描き出しています。カンヌ国際映画祭での受賞や、タルコフスキーによる称賛、そして近年のカンヌ・クラシックスでの上映など、その評価は国内外で揺るぎないものです。知名度こそ他の代表作に譲るかもしれませんが、映画史において重要な位置を占める作品として、今なお多くの映画愛好家から敬愛されています。この機会に、ブニュエルが描いた風刺と洞察に満ちた世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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