ナショナル・グリッド

ナショナル・グリッド：英国と米国を繋ぐエネルギーインフラ企業

ナショナル・グリッド社は、イギリス・ロンドンに本社を置く、送電およびガス供給事業を展開する巨大企業です。その事業領域は、イギリスとウェールズに加え、アメリカ合衆国北東部にまで広がっています。ロンドン証券取引所とニューヨーク証券取引所に上場しており、国際的なエネルギー市場において重要な役割を担っています。

成長の歴史：民営化からグローバル企業へ

ナショナル・グリッド社の歴史は、イギリス電力事業の民営化に深く関わっています。かつて、イギリスの電力事業は国営のCentral Electricity Generating Board（CEGB）によって統括されていました。しかし、1990年にCEGBが解体されると、発電事業は民間に移行し、送電事業はナショナル・グリッド社、配電事業は複数の地域事業者へと分割されました。ナショナル・グリッド社は1995年にロンドン証券取引所に上場し、その後、積極的な買収戦略によって事業規模を拡大していきます。

2000年には、アメリカのNew England Electric Systemを買収し、続く2002年にはNiagara Mohawk Power Corporationを買収。さらに、同年にはイギリスのガス供給事業者であるLattice Group plcを買収し、ガス事業への進出も果たしました。2005年にはガス事業をナショナル・グリッド社の一部門として統合し、2006年にはアメリカのKeySpan Corporationを買収、アメリカにおける事業基盤を確固たるものにしました。

国際的な事業展開と技術革新

ナショナル・グリッド社は、イギリス国内で広大な送電網とガスパイプラインを所有・運営しています。イギリスにおける送電網は地上と地下を合わせて9,000キロメートル以上、ガスパイプラインは7,000キロメートル以上に及びます。アメリカ合衆国においても、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州を中心に、14,000キロメートル以上の送電網と57,000キロメートル以上のガスパイプラインを保有し、アメリカにおける売上高はイギリスの2倍以上を占めています。アメリカの事業拠点はマサチューセッツ州のウォルサムに置かれています。

同社は、ヨーロッパ規模の送電網構想「European super grid」にも参画しています。オランダの送電事業者TenneTとのジョイントベンチャーにより、イギリスとオランダを結ぶ海底送電ケーブル「BritNed」を建設し、2011年には開通させました。また、環境への配慮も重視しており、2015年には景観への影響を最小限に抑える次世代型鉄塔「T-pylon」を開発・導入するなど、持続可能なエネルギーインフラの構築に貢献しています。

まとめ：エネルギー供給の未来を担う企業

ナショナル・グリッド社は、イギリスにおける電力事業の民営化を契機に設立され、積極的な買収戦略と技術革新によって成長を遂げ、イギリスとアメリカ合衆国において送電とガス供給事業を担う巨大企業に成長しました。広大な送電網とガスパイプラインを保有し、安定的なエネルギー供給に貢献する一方で、環境問題への配慮も進め、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組んでいます。今後も、世界的なエネルギー情勢の変化に対応しながら、その役割を担っていくことが期待されます。

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