エネル

エネルについて

エネル（Enel S.p.A.）は、イタリアの電力・エネルギー市場において重要な地位を築く大手企業です。1962年に設立されたこの会社は、当時の国有化政策のもと、複数の電力会社が統合されて生まれました。元々は国営企業（Ente Nazionale per l'energia ELettrica）として創業したエネルですが、1960年代以降の民営化の波の中で、2006年にはイタリア政府が31.1%の株を保有する民間企業へと変貌を遂げました。現在、エネルはイタリア証券取引所に上場し、多様な事業を展開しています。

エネルの事業展開

エネルの主力事業は、発電および配電であり、特にイタリア国内においては独占的な市場シェアを持つ電力会社です。加えて、ガスや通信事業にも投資を行っており、非常に幅広い事業展開が特徴です。2019年の収益はおよそ890億ドルに達し、世界の企業の中で89位にランクイン。株式市場での時価総額は580億ドルにのぼり、ヨーロッパのユーティリティ企業の中でもトップを誇ります。このように、エネルは国際的な電力企業としての存在感を強めています。

発電方法の多様性

エネルの発電事業は、原子力、水力、火力、地熱、太陽光など多岐にわたっています。イタリア最大の発電業者であり、同時にフランスからの原子力発電の電力を輸入するなど、国際的な電力供給も手がけています。さらに、フランスやスロバキアに新たな原子力発電所を建設し、欧州加圧水型炉（EPR）の開発に積極的に投資し、将来的な電力供給の安定化を図っています。地熱発電においても、エネルは100年以上の経験を活かし、国内外に32箇所・20箇所の発電所を運営しています。太陽光発電においても1993年から進めており、様々な方式での発電に挑戦しています。

国際的な展開

1990年代の欧州連合による電力市場の自由化に伴い、エネルは1999年に再編成され、さらなる民営化を実施しました。同時に、送電網を管理する子会社テルナを設立し、事業を多角化しました。エネルは他国の電力会社を買収し、イタリア国内で42,000 MW、国外では50,000 MWの発電を実現しています。特に、ヨーロッパ全体での発電量では、ドイツのE.ONに次ぎ、フランスのEDFを上回る位置にあります。

また、スロベニア、ギリシャ、フランス、ベルギー、トルコなど、世界中の国々に電力会社を持ち、協力関係を構築しています。2008年には、再生可能エネルギーを専門に扱う子会社エネル・グリーン・パワーを設立し、世界規模での再生可能エネルギーの推進に力を入れています。2012年にはテルナの株式を全て売却し、資本の関係を解消しました。

社会への影響

しかし、エネルの活動は一部で批判を受けることもあります。2019年にはチリで公共料金の値上げに伴う暴動の中でエネルの施設が襲撃され、サンティアゴにあるビルが放火される事態が発生しました。

エネルは、国際的な電力市場で重要な役割を果たす企業であり、今後も成長と挑戦を続けていくことでしょう。

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