ナスレディーヌ・ディネ

ナスレディーヌ・ディネ（1861年3月28日 - 1929年12月24日）は、フランスの画家であり、オリエンタリズムの画家として知られています。本名はアルフォンス＝エティエンヌ・ディネといいましたが、後にイスラム教に改宗し、ナスルッディン・ディネと改名しました。彼はオリエンタリスト画家協会の創設者の一人でもあります。

ディネはパリで判事の息子として生まれました。名門校であるリセ・アンリ4世を卒業後、1881年にパリ国立高等美術学校に入学し、ピエール＝ヴィクトール・ガランに師事しました。さらにアカデミー・ジュリアンでウィリアム・アドルフ・ブグローやトニ・ロベール＝フルーリーに学び、画技を磨きました。

1884年、ディネは昆虫学者のチームに加わり、アルジェリア南部のブー・サアーダを初めて訪れました。翌年には政府の学術調査隊の一員としてラグアットを訪れ、この地で初めてアルジェリアの風景や人々を描きました。これらの経験を通して、ディネは北アフリカの文化に深く魅了されていきました。

1889年のパリ万国博覧会では、彼の作品が出展され銀賞を受賞しました。1890年には、エルネスト・メソニエやオーギュスト・ロダンらが再建した国民美術協会の会員となりました。また、1887年にはリュクサンブール美術館の館長であるレオン・ベネディットと共に、オリエンタリスト画家協会を設立しました。

1903年、ディネはアルジェリアのブー・サアーダに家を購入し、1年のうちの4分の3をこの地で過ごすようになりました。彼は北アフリカの文化に対する理解を深め、ついにイスラム教に改宗することを決意します。1908年に手紙で改宗の意思を表明し、1913年に正式にイスラム教に改宗し、名前をナスルッディン・ディネと改めました。1929年には、妻と共にメッカへのハッジ（巡礼）を果たしました。

ディネの画風は、写実的で民俗学的な興味が感じられる正確さが特徴です。彼はアラビア語にも堪能であり、1898年には6世紀アラビアの詩人アンタラ・イブン・シャッダードの叙事詩をフランス語に翻訳・出版しました。彼の作品は、オリエンタリズムの視点を通して、北アフリカの文化や生活を生き生きと描き出しています。

1896年には、レジオンドヌール勲章（シュヴァリエ）を受勲しました。

参考文献
Benjamin, Roger (2004). "Chapter 3: Orientalism, modernism and indigenous identity". In Edwards, Steve; Wood, Paul. Art of the Avant-Gardes. New Haven: Yale University Press in association with The Open University. ISBN 0-300-10230-5.
François Pouillon, Les Deux vies d'Etienne Dinet, Balland, 1997 ISBN 2-7158-1142-X

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