ナソロジー

ナソロジーについて

ナソロジー（Gnathology）は、顎口腔系を一つの機能的単位として研究し、治療を行うことを目的とする学問分野です。この分野は1920年代にアメリカのMcCollumとStallardによって創設され、顎の機能と関連する要素を深く理解するための基盤が築かれました。

歴史

ナソロジーの理論は、主に有歯顎を対象にして発展しました。以前の研究は、下顎の動きを極めて精密に記録することなく行われていたため、得られたデータは曖昧でした。1921年、McCollumはターミナル・ヒンジ・アキシスの存在を証明し、下顎運動の測定のための明確な基準が確立されました。この進展により、下顎の動きの理解が一歩進みました。1926年には、McCollumがStallardやStuartと共にカルフォルニア・ナソロジカル・ソサエティーを設立し、学問の発展に寄与しました。

功績

1929年に、ナソグラフと呼ばれる口外法の測定器具を開発し、1934年にはナソスコープという、現在のナソロジカル・インスツルメントの原型を完成させました。これらの器具の発明は、ナソロジーの初期の大きな成果として位置付けられ、下顎の運動理解が急速に進展することとなりました。さらに、咬合を分析することで、治療の目標としての咬合様式も示され、これを達成するための治療方法が開発されました。しかし、これらの方法があまりにも複雑であるとの批判があり、より簡素な技術の改善が求められることになります。

治療目標の歴史

初期の段階では、McCollumらはバランスド・オクルージョンを治療目標としていましたが、実際にはその適用が多くの失敗を引き起こすことが明らかになりました。Stallardは、高齢者の口腔内を観察することで、前歯がガイド役を果たし、臼歯部が上下に離れる動きを明らかにしました。また、理想の咬合は、各部位が相互に保護する関係にあることを示し、この新しい咬合様式を「ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン」と名付けました。その後、この概念は「オルガニック・オクルージョン」という用語に改められ、咬合の研究がさらに進みました。1949年には、Thomasによってカスプ・フォッサ・ワクシング法という機能的咬合面の形成手法が開発されました。これにより、厳密な咬合関係が求められるようになり、ナソロジーの補綴法も進化を遂げましたが、これには依然として批判がありました。

補綴法の特徴

ナソロジーにおける補綴法は、次の特徴を持っています。ターミナル・ヒンジ・アキシスを実測し、咬合の基準とし、パントグラフを用いて下顎運動を測定します。また、ナソロジカル・インスツルメントを使用して下顎運動を再現し、中心位を機能的咬合位として与えます。さらに、全口腔を修復し、フル・マウス・リコンストラクションを治療の最終的な目標とするのが一般的です。上下顎を同時に修復し、ファンクション・ワキシング法で1歯対1歯の関係を実現することを目指します。オルガニック・オクルージョンを理想とし、治療期間中は金合金で製作した暫間補綴物を使用して効果を確認し、最終的には咬合の調整が行われます。

ナソロジーはその臨床に関連付かれた理論と臨床成績で高く評価されていますが、一方でその術式は複雑であり、一般の医療現場では使いにくいとの批判を受けています。

ナソロジスト

ナソロジーを実践する専門家たちを指してナソロジストと呼びます。彼らは国際ナソロジー学会を設立し、学問の発展と実践の普及を目指しています。

ナソロジカル・インスツルメント

この器具はオーラル・リハビリテーションに使用される高精度の全調節性咬合器です。ナソロジー学派によって開発され、患者の実際の下顎運動を正確に再現できる設計となっています。

ナソロジーは、その豊かな歴史と高い専門性を持たせて発展してきており、今後もさらなる研究と実践が期待されます。

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