中心位

中心位について解説

中心位（ちゅうしんい）とは、歯科医学用語であり、下顎が上下顎に対して安定した位置にある状態を指します。この位置において、下顎の関節が左右対称に各下顎窩に収まり、回転運動を行いやすくなります。中心位は診療においてさまざまな目的で活用され、特に咬合に関連する診断や治療において重要な基準となります。

中心位の意義

中心位は歯科診療において、下顎と上顎の相対的な位置関係を理解するための基準を提供します。具体的には、残存歯による咬合が困難な場合においても、補綴物の咬合採得に役立ちます。また、顎関節症や咬合の異常を分析・診断・治療する際にも、中心位は不可欠です。これは、顎関節における位置関係が歯科疾患と密接に関連しているからです。

中心位に関する歴史的背景

20世紀前半から中心位は歯科医療で重要な概念として認識されてきました。1935年、Schuylerは、中心位の早期接触が口腔系の病的変化との関係を示すことを指摘しました。1955年にはMcCollumが、中心位には長期的に変化が少ないことを発見しました。続いて1956年、アメリカ歯科補綴用語委員会が中心位を「下顎最後方位」と定義しました。さらに1968年には、McCollumが新たにターミナル・ヒンジ・アキシスという概念を中心位の定義に取り入れました。

中心位の早期接触修正方法については、McCollumやStallardなどの研究者が言及し、PosseltやRamfjordは中心位と顎関節症との関係についての理論を展開しました。理想的な咬合については、McCollumをはじめとするナソロジー学派の研究者が中心位と咬頭嵌合位の一致を提案し、SchuylerやPankey、Mannといった研究者は両者の間にロング・セントリック、あるいはワイド・セントリックを設けることを提唱しました。

このように、中心位は20世紀前半から現代にかけて、さまざまな研究分野において探索されてきました。これらの研究は、中心位の定義や意義、理想的な咬合の要素、疾患との関連性、咬合診断と治療の技術に貢献してきたのです。

中心位の採得方法

中心位を採得するためには、いくつかの方法があります。主な手法としては、以下のものが挙げられます。

• - 両手誘導法: 両手で患者の顎を誘導し、安定した中心位を確保します。
• - ジグを利用する方法: 特殊な器具を使って正確な位置を測定します。
• - ゴシックアーチ描記による方法: 患者が咬む際のアーチ状の軌跡を描画し、中心位を把握します。
• - 患者自身による誘導: 患者が自身で顎の位置を調整することで程度のよい中心位を定めます。

これらの方法は、患者の状態によって選択されるべきであり、それぞれの技術には特有の利点や注意点があります。

関連項目

中心位に関連するテーマには、咬合理論、補綴学、顎関節症、総義歯学などがあります。これらの分野は、中心位の理解と応用に重要な役割を果たします。

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