ナソ・ティエル・ディ自治県

ナソ・ティエル・ディ自治県：先住民族ナソ族の自治行政区画

ナソ・ティエル・ディ自治県は、パナマ共和国に存在する自治県（コマルカ）の一つです。この地域は、パナマの先住民族であるナソ族の自治行政区画として機能しており、他の県には属さない独立した行政単位となっています。2020年12月4日に、ボカス・デル・トーロ県から分離・設置され、県都はシーイクに置かれています。人口は約5千人。

県名の「ティエル」は、ナソ族の神話に登場する「大いなる母」に由来し、「ディ」はナソ語で「水」を意味します。ナソ族は、テリベ族またはティエル・ディとも呼ばれ、民族独自の王を持つことで知られています。

歴史

ナソ族の自治県設置への道のりは、決して平坦ではありませんでした。

1997年5月、ナソ族議会は当時の大統領に対し自治地域の創設を要求しましたが、テリベ郡区の設置にとどまりました。2008年には同様の法案が国民議会へ提出されましたが、却下されています。

2018年10月25日、国民議会はついにナソ族の自治県設置を認める法案を採択しました。しかし、当時の大統領は自然保護区への影響と憲法違反を理由にこの法案を拒否しました。

2020年11月12日、最高裁判所は法案が憲法に違反しないとする判決を下し、同年12月4日に大統領が法案を承認。これにより、ナソ・ティエル・ディ自治県が正式に発足しました。

地理

ナソ・ティエル・ディ自治県は、パナマの西部に位置し、コスタリカと国境を接しています。国境地帯にはタラマンカ山脈がそびえ立ち、県の大部分は熱帯雨林に覆われています。主要な河川としてはテリベ川が挙げられ、県都シーイクはこの川沿いに位置しています。

県の面積は約1,600平方キロメートルで、そのうち91%にあたる土地がラ・アミスター国立公園およびパロ・セコ森林保護区に指定されています。ラ・アミスター国立公園は、世界遺産であるタラマンカ山脈＝ラ・アミスター保護区群の一部を構成しています。世界遺産でもある国立公園が県内に存在することは、2018年の論争の一因となりました。

隣接行政区画

ボカス・デル・トーロ県
リモン州（コスタリカ）
プンタレナス州（コスタリカ）

下位区分

ナソ・ティエル・ディ自治県は、1つの郡（Distrito）と3つの郡区（Corregimiento）から構成されています。

ナソ・ティエル・ディ郡 - 自治県と同一領域
Bonyik郡区
San San Drui郡区
* テリベ郡区

ナソ・ティエル・ディ自治県は、先住民族の権利と自然保護、そして持続可能な開発という、現代社会が抱える重要な課題を象徴する地域と言えるでしょう。

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