ナタン (預言者)

ナタンは、旧約聖書に登場する重要な預言者の一人であり、特にダビデ王の治世においてその名が知られています。ヘブライ語で「נָתָן」（Nathan）、古代ギリシア語では「Ναθάν」、英語でも「Nathan」と表記されます。

ダビデ王が神殿を建設したいという願望を抱いた際、最初に相談を持ちかけたのがナタンでした。ナタンは当初、その計画に賛同しましたが、その夜、神がナタンに現れ、神殿はダビデではなく、彼の子孫によって建てられると告げました。この時、神はダビデの家が永遠に続くことを約束しました。この約束は、後に使徒パウロによってイエス・キリストに適用されることになります（ヘブライ人への手紙1:5）。

しかし、ダビデ王はその後、バト・シェバという女性と姦淫を犯し、さらに彼女の夫であるウリヤを殺害するという重大な罪を犯してしまいます。この時、神はナタンをダビデのもとに遣わし、その罪を指摘させました。ナタンは、巧みなたとえ話を用いて、ダビデに自らの罪の重大さを悟らせます。ダビデは自分の罪を認め、悔い改めましたが、ナタンは神の裁きとして、ダビデとバト・シェバの間に生まれた最初の子が死ぬであろうと宣告しました。しかし、ダビデ自身は死を免れました。

その後、ダビデとバト・シェバとの間に二番目の子供、ソロモンが生まれました。神は再びナタンを遣わし、この子に「エディデヤ」（ヘブライ語: יְדִידְיָהּ、Jedidiah）という名前を与えるように命じました。この名前は、「主に愛された者」という意味を持ちます。

また、ダビデの四番目の息子であるアドニヤが王位を奪おうとした際には、ナタンは事態を収拾するために策を講じました。彼はダビデにソロモンを後継者にするように促し、ソロモンを王位に就けることに成功しました。この時、ナタンはソロモンに油を注ぎ、正式に王として認めました。

ナタンは、ヒゼキヤ王の治世において、預言者ガドと共に神殿での楽器の配置を指揮しました。また、ナタンの息子と思われるアザリヤとザブトは、それぞれ重要な地位に就いていました。

このように、ナタンは預言者としてだけでなく、ダビデ王の相談役、時には助言者として、また王位継承に関わる重要な役割を担いました。彼の生涯は、神の言葉を伝え、人々を導くことの大切さを示しています。

関連事項として、聖書の登場人物の一覧も参照ください。

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