ナッソー協定

ナッソー協定とは

ナッソー協定（Nassau Agreement）は、1962年12月22日にアメリカ合衆国の大統領ジョン・F・ケネディとイギリス首相ハロルド・マクミランの間で結ばれた重要な二国間協定です。この協定は、イギリスの核抑止力を強化するための取り決めとなりました。特に、イギリスが計画していたスカイボルト・ミサイルの開発中止を見越し、アメリカから新たにポラリス・ミサイルを供給される内容が含まれています。

背景

1950年代には、有効な核戦力として有人爆撃機が核兵器を運搬する主な手段とされました。しかし、地対空ミサイルの台頭により、有人爆撃機の効果は大きく低下し、イギリスの核抑止力も危機に直面しました。イギリス政府は、既存のブルースチールやブルーストリークに代わる新たな戦略を求め、アメリカのスカイボルト・ミサイルの導入を進めました。しかし、スカイボルト計画はその後の試射失敗により、アメリカの信頼を失ってしまいます。

スカイボルト危機

1962年11月、アメリカはスカイボルトの中止を検討し始め、その旨をイギリス側に伝えました。この知らせはイギリスに衝撃を与え、マクミラン首相は緊急会談を開くことにしました。12月18日、ナッソーで行われた会談では、アメリカがイギリスに対して多角的核戦力を提供するとともに、ポラリス・ミサイルの売却に合意することとなります。

ナッソー協定の内容

ナッソー協定のもと、アメリカはイギリスにポラリス・ミサイルを供給し、イギリスはその運用に必要な潜水艦と弾頭を自国で製造する権利を得ました。この取り決めにより、イギリスは独立した核戦力を保持しつつも、アメリカとの連携を強化していくことになりました。また、この協定では、イギリスの核兵器が使用される際には、アメリカとの事前の合意が必要である「二重の鍵」の配置が求められました。

ポラリス売却協定

ナッソー協定の結果として、1963年にはポラリスミサイルシステムの売却協定も締結されました。イギリスはアメリカからポラリス・ミサイル、発射筒、火器管制システムを取得し、その対価としてアメリカの許可が必要となる形態が取られました。イギリスの潜水艦は最初の1隻が1968年に就役し、ポラリス・システムはその後、続くトライデント・ミサイルシステムのベースとなりました。ポラリスは後に「シェヴァリーン」プログラムを受け、改良を施されました。

結論

ナッソー協定は、冷戦時代におけるアメリカとイギリスの特別な関係を象徴する出来事であり、双方の核戦力の運用において新たな幕開けをもたらしました。これにより、イギリスは独自の核戦力を持ちながら、アメリカとの密接な協力関係を維持するという新たな戦略を実現しました。この協定がもたらした影響は、以降の冷戦構造においても重要な意味を持ち続けました。

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