ナヒチェヴァン (都市)

ナヒチェヴァン：アゼルバイジャンの歴史と現代が交差する都市

アゼルバイジャン共和国に位置するナヒチェヴァン自治共和国の中心地、ナヒチェヴァン市は、豊かな歴史と活気ある現代社会が織りなす魅力的な都市です。6万人以上の人口を擁し、ガラス製品、家具、織物、絨毯、アルミニウム、タバコなど多様な産業が発展しています。

かつては、空港、道路、鉄道網が整備され、交通の要衝として栄えていましたが、1988年から始まったナゴルノ・カラバフ戦争の影響により、アゼルバイジャンの他地域から孤立を余儀なくされました。現在も、土壌浸食や洪水の被害に悩まされながらも、緑化や植林といった環境保護対策が積極的に行われています。

ナヒチェヴァン市の歴史は古く、12世紀に建てられたモミネ・ハトゥン廟は、その歴史を物語る重要な史跡です。イルデニズ朝時代の建築様式を伝えるこの霊廟は、アゼルバイジャンの世界遺産暫定リストにも登録されており、多くの観光客を惹きつけています。

交通アクセスは、ナヒチェヴァン国際空港が最も便利です。バクーやギャンジャからの国内線に加え、モスクワやイスタンブールなどからの国際線も利用できます。また、トルコやイランからはバス路線も運行されています。かつては、アゼルバイジャン本土との交通手段としてイランルートが利用されていましたが、アゼルバイジャン政府のビザ政策により外国人観光客は利用が困難でした。

2020年のナゴルノ・カラバフ紛争の終結後、アゼルバイジャン本土とナヒチェヴァンを直結する回廊の建設が計画され、イランを経由しない陸路の開通が期待されていましたが、両国間の関係悪化により、協議は難航しました。しかし、2022年3月11日、アゼルバイジャンとイランは、アルメニア領を迂回する輸送路に関する覚書に調印。この新たな輸送路は、イランの検問を受けずに通過できる可能性があり、道路と鉄道の新設が予定されています。建設費用はアゼルバイジャンが負担する見込みです。

市内交通については、2004年まで3路線のトロリーバスが運行されていました。現在、市内交通の状況は、新たな交通網の整備に伴い変化しつつあります。

ナヒチェヴァン市は、歴史的建造物と現代産業が共存する、アゼルバイジャンの重要な都市です。国際空港や陸路の整備により、今後ますます発展が期待されるでしょう。

著名な出身者として、帝政ロシアの騎兵将軍であったグセイン・ハン・ナヒチェヴァンスキーや、アゼルバイジャン共和国第3代大統領であるヘイダル・アリエフらがいます。これらの偉人たちの業績も、ナヒチェヴァン市の歴史と文化に深みを与えています。

ナヒチェヴァン市は、姉妹都市としてジョージアのバトゥミとベラルーシのブレストを有しており、国際的な交流も盛んです。歴史、文化、産業が調和するナヒチェヴァン市は、今後の発展が注目される都市と言えるでしょう。

もう一度検索