ナポリタン (短編映画)とは？意味をやさしく解説

映画『ナポリタン』について

『ナポリタン』は、上田慎一郎監督が手掛けた2016年製作の短編映画です。2018年には『上田慎一郎ショートムービーコレクション』の一篇として劇場公開されました。本作は、一風変わった設定と、その中に込められたメッセージ性が魅力的な作品です。

製作の背景

本作は、株式会社シミズオクトが製作を担当しました。もともとは、俳優の川口貴弘氏が、自身が主演する映画を作りたいという意向から企画がスタートしました。複数の監督による企画提案の中から、上田慎一郎監督の企画が採用されました。上田監督の企画書は、タイトルである「ナポリタン」と書かれた紙とナポリタンの写真、そして簡単なあらすじのみというシンプルなものでしたが、そのユニークさと、上田監督の過去作の評価から満場一致で選ばれたそうです。また、エグゼクティブプロデューサーの清水佳代子氏は、上田監督の明るい人柄に惹かれ、この企画に乗り出したと語っています。

当初、主演として企画されていた川口氏は、最終的に本作のイメージには合わないという判断から、ラインプロデューサーに転身しました。しかし、冒頭のシーンには同僚役として出演しています。出演者の牟田浩二氏は、本作を「スタッフ、キャストが遊んでいるような感じで作られた映画」と表現しており、現場は非常に和やかな雰囲気だったようです。

上田監督によると、高校生時代に「この世にナポリタンという言葉しかなかったら…」というコントを作ったことがあり、それが本作の着想になったとのことです。上田監督は、本作を「ナポリタン」というセリフのトーンやテンションでコミュニケーションをとろうとする奇妙なファンタジーとして捉えつつも、その裏で「コミュニケーションとは何か？」「言葉とは何か？」といったテーマを観客に問いかける作品として仕上げたと語っています。

公開と反響

本作は、2016年に「TOKYO月イチ映画祭」で初公開されました。その後、自主制作でDVD化され、オンライン販売も行われました。2017年には、下北沢トリウッドで上田監督の妻であるふくだみゆき監督の作品と同時上映されました。また、TOKYO MXでテレビ放送もされています。

上田監督の『カメラを止めるな!』のヒット後、本作は動画配信サイトで有料配信されました。その後、オムニバス映画『上田慎一郎ショートムービーコレクション』の一篇として劇場公開され、DVDにも収録されました。

ストーリー

物語は、人の話をあまり聞かない会社員の川上（福島龍一）が、恋人（秋山ゆずき）との同棲生活を送る中で展開します。ある晩、恋人がナポリタンを作って待っていると告げていたにもかかわらず、川上が外食をして帰宅したことから、二人は喧嘩になります。翌朝、川上は他人の言葉が全て「ナポリタン」としか聞こえなくなるという奇妙な現象に遭遇します。

キャスト

福島龍一 - 川上
秋山ゆずき - 恋人
牟田浩二 - 恋人の父
森恵美 - 恋人の母
井関友香 - 恋人の姉
川口貴弘
松本卓也
細井学
紺野ふくた
倉田奈純
坂川良
原真一
坂本幸成

スタッフ

監督・脚本・編集：上田慎一郎
撮影：神林裕介
録音：古茂田耕吉
ヘアメイク：菅原美和子
制作：ふくだみゆき、佐熊雄、代田恵美
スチール：鶴田照夫
主題歌：「ナポリタン」（歌・作曲：橋本晃洋）
エグゼクティブ・プロデューサー：清水佳代子
プロデューサー：大和田光人
ラインプロデューサー：川口貴弘
製作：株式会社シミズオクト
制作：株式会社シミズオクト、PANPOKOPINA、SHIGUSA

受賞歴

「那須ショートフィルムフェスティバル2016」特別審査員特別賞
「第38回 TOKYO月イチ映画祭」グランプリ

エピソード

主演の福島龍一氏は、本作のDVD販売イベントを最後に俳優活動を引退しています。また、秋山ゆずき氏は、本作で上田監督作品への二度目の出演となりました。前作では女子高生役だった秋山氏が、本作では大人の女性を演じたことについて、制作のふくだみゆき氏は感慨深く語っています。

上田監督は、本作を観た観客が「ナポリタンナポリタン」と言い合っていたら自分の勝ちというユニークな賭けをしているそうです。

ナポリタン (短編映画)