ナユタとフカシギ

スキマスイッチの4枚目のオリジナルアルバム『ナユタとフカシギ』は、彼らの音楽性の新たな地平を切り開いた意欲作として知られています。初回生産限定盤と通常盤の2形態でリリースされ、収録曲の多彩さと、アルバム全体を覆う独特な世界観が特徴です。

本作は、先行シングル「マリンスノウ」こそ未収録であるものの、それ以降に発表されたシングル曲を網羅。アルバムタイトルにもなっている「ナユタ」と「フカシギ」は、いずれも非常に大きな数を意味する仏教由来の言葉であり、歌詞カードにおける数字と漢数字の色分けなど、細部にまでこだわりが光ります。

常田真太郎は、後のインタビューで本作について「（ソロ活動の）エネルギーが爆発している」と語っており、創造性の高まりが窺えます。一方、大橋卓弥は「（スキマスイッチの）歴史の中ではちょっと変な位置にいるアルバム」と評していますが、ライブでの演奏頻度が高い楽曲も多く、ファンからの根強い人気を誇っています。

収録曲について

アルバムには、バラエティ豊かな楽曲が収録されています。以下に収録曲の一部を解説します。

双星プロローグ: アルバムの幕開けを飾る楽曲。常田が原案を作ったものの、大橋がメロディを大幅に変更したというエピソードがあり、ソロ活動を経て互いを尊重しつつ高め合う関係性が垣間見えます。歌詞は、二人の出会いを想起させる内容となっています。

雫: 11thシングル「虹のレシピ」に収録されていた楽曲。

ゴールデンタイムラバー (album ver.): 12thシングル「ゴールデンタイムラバー」のアルバムバージョン。シングルバージョンよりも前奏が長く、フェードアウトしない点が特徴です。タイアップ作品である『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のオープニングテーマには、このバージョンをテレビサイズに編集したものが使用されました。

ムーンライトで行こう: JR東海の夜行快速列車「ムーンライトながら」をモチーフにした楽曲。カントリー調のサウンドに乗せて、ノスタルジックな情景が描かれています。

病院にいく: 山下達郎や大瀧詠一といったアーティストのサウンドに影響を受けて制作された楽曲。ユーモラスな歌詞と軽快なメロディが印象的です。

デザイナーズマンション: 大橋が知人の代官山の家を訪れたことがきっかけで生まれた楽曲。全ての楽器を二人だけで演奏しており、シンプルなアレンジながらも味わい深い仕上がりとなっています。

8ミリメートル: ケータイドラマサイトDORAMO内ドラマ『8ミリメートル』の主題歌。楽曲の世界観を基にドラマが制作され、ショートショートフィルムフェスティバル & アジアで優秀賞を受賞しました。常田の母親の遺品である8ミリフィルムが制作のきっかけとなっています。

レモネード: ジャズのようなコード進行が特徴的な楽曲。ギターレコーディングは、ギタリストの今剛の提案により、今と大橋が同時に演奏するというスタイルで行われました。

SL9: 1994年に木星にシューメーカー・レヴィ第9彗星が衝突した際の常田の実体験が元になった楽曲。UNICORNの川西幸一がドラムで参加しており、壮大なスケール感を持つナンバーです。

虹のレシピ (album ver.): 11thシングル「虹のレシピ」のアルバムバージョン。シングルバージョンとは異なり、フェードアウトしない形で収録されています。

* 光る: 大橋と常田がそれぞれ作詞を手掛けた楽曲。ストリングスが美しいバラードです。

『ナユタとフカシギ』は、スキマスイッチの音楽的な幅広さと、常に新しい表現を追求する姿勢が感じられる作品です。実験的なサウンドや歌詞に込められたメッセージなど、聴き込むほどに新たな発見があるでしょう。

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