ナラトゥー (パガン王朝)

ナラトゥーの生涯と功績

ナラトゥーは1118年頃にパガン王朝の王アラウンシードゥーと王妃ヤダナボンの次男として生まれました。彼の母は、ビルマの大臣の娘であり、ナラトゥーはその環境で育ちました。当時の王位の後継者として、兄のミンチンソウが指名されていましたが、彼は父であるアラウンシードゥーに疎まれ、地方に派遣されていました。ナラトゥーは、宮廷内での事務を代行し、父の目に留まる存在となり、やがて事実上の後継者となりました。

即位と王権の獲得

1167年、アラウンシードゥーが重病にかかると、ナラトゥーは父をシュウェグージー寺院に移送するよう命じましたが、彼は父を窒息させて殺害しました。この残酷な行為は、彼の王位獲得への決断を示すものであり、ナラトゥーは即位を果たすことができました。しかし、ミンチンソウが軍を率いて戻り、王位を巡る争いが繰り広げられました。ナラトゥーは最終的にミンチンソウを毒殺し、完全に権力を掌握しました。これにより、彼は仮の王位に就くも、周囲の反感を買うこととなります。特に、大僧正のパンタグはナラトゥーの行動に失望し、彼から離れました。

晩年と死

ナラトゥーは1170年に殺害され、その理由についてはいくつかの説があります。一つは、パティカヤの王による復讐に関するもので、彼の娘が殺害されたためにナラトゥーが狙われたとされています。別の説では、シンハラ王朝の攻撃によって戦死した可能性も考えられています。このように、彼の死は政変と連鎖し、深い背景を持っていました。

ダマヤンジー寺院

ナラトゥーの最も著名な功績は、ダマヤンジー寺院の建立です。彼は即位後、自らの行動を悔い、贖罪のためにこの寺院を建設したとされています。しかし、工事は遅々として進まず、技術者が処刑されるなどの噂も立つほどでした。完成した寺院は、重厚感が漂い、同時代のアーナンダ寺院とは異なる印象を与えました。ナラトゥーはこの寺院を通じて、過去の自らの過ちを償おうとしたのでしょう。

家族と後継者

ナラトゥーには二人の子どもがいました。ナラティンカーとナラパティシードゥーの子が彼の名を受け継ぎ、次世代へと続きます。彼の生涯は、王朝の権威を大きく揺るがす出来事で満ちており、歴史の一端を担う人物であったと言えます。

ナラトゥーは、その治世の評価が低く、王朝の権威を損なう結果となりましたが、ダマヤンジー寺院の建立など、彼の行動は後の時代に影響を与え続けています。

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