ナルキッソス

ナルキッソスの物語

ナルキッソス（古代ギリシア語: Νάρκισσος）は、古代ギリシアの神話に登場する美少年であり、その魅力と悲劇的な運命から多くの人々に語り継がれています。彼にまつわる伝説は何通りも存在しますが、特に注目されるのは、自己愛の象徴としての側面です。

予言と初めの出来事

ナルキッソスは、他者からの愛を受けることに心を動かされない冷たい性格を持っていました。盲目の予言者テイレシアースは、彼に対して「己を知らないままでいれば、長生きできるだろう」と占いを行いますが、ナルキッソスはその警告に耳を傾けず、アプロディーテーが贈った贈り物を侮辱してしまいます。この行動が運命を暗転させるきっかけとなります。

アプロディーテーの怒り

アプロディーテーの怒りは計り知れず、彼女はナルキッソスが愛する者と結ばれないように仕向けます。ナルキッソスは多くの愛慕を受けていたものの、誰にも心を開くことはありませんでした。その中にはアメイニアスという男性もおり、ナルキッソスの冷淡さに絶望し、自死を選んでしまいます。

エーコーの愛と絶望

また、森の妖精エーコーもナルキッソスに恋をしましたが、彼女はゼウスの秘密を守るために口を封じられてしまいます。エーコーはナルキッソスの言葉を繰り返すことしかできず、彼に無視され続けました。その切ない思いに打ちひしがれた彼女は、姿を失い声だけが残り、echoの語源ともなったと言われています。

自己への恋

神々への侮辱を受けた罰として、ナルキッソスは自分自身に恋をする運命を背負うことになります。恵みの場所として知られるムーサの山の泉へと導かれたナルキッソスは、水面に映る自分の姿に目を奪われ、そこで美しさに心を奪われることになりました。しかし、その恋は実らず、彼はそのまま動けなくなり、やがて衰えて死に至ります。水面に映った自分に口付けをしようとした結果、水に沈んでしまったとも伝えられています。

死後の象徴

ナルキッソスの死後、彼の愛が込められた水仙の花がその場所に咲くことになります。この美しい花は、後にスイセンと呼ばれることになり、欧米ではナルシスと名付けられました。この物語は、精神分析の分野においても扱われ、ナルシシズム（自己愛）の語源ともなっています。

ナルキッソスの悲劇は、自己愛の危険性と他者を愛することの重要さを独特な形で象徴しており、古代から現代に至るまで多くの人々に感銘を与えるテーマとされています。彼の物語は、内面的な美しさや人間関係についての深い教訓を投げかけています。

もう一度検索